誰でも、男の子なら覚えのあることだが、子供の時分に、
女の子の意地の悪さとずるさと我儘に悩まされ、
女ほど嫌らしい動物はいないと承知しているのに、
あとで結婚してみて、
また女の意地の悪さとずるさと我儘を発見するときは、
前の記憶はすっかり忘れている。
それを生れてはじめての大発見のように錯覚するのは、
無駄な苦労だと思う。

by 三島由紀夫