「あれってファウルスローじゃないの?」とルール違反を問う声もあるそうだ。そこはハッキリさせたほうがいいかもしれない。
正直、何回かに1回はファウルスローだと思う。サッカーの競技規則では、スローインの項目は以下のとおりに記載されている。

ボールを入れる時、スローワーは・競技のフィールドに面して立って、・両足ともその一部をタッチライン上またはタッチラインの外のグラウンドにつけ、
・ボールが競技のフィールドを出た地点から、頭の後方から頭上を通して両手を用いてボールを投げなければならない。

焦点は2つめだ。「両足とも(中略)グラウンドにつけ、」と書いてある。スローワーはボールを投げる時、両足ともに地面から離れてはならない。しかし、ロングスローの場合は投球フォームに勢いがあるので、後ろ足が浮いてしまいがち。
そこでスローワーは、その後ろ足を勢いのまま、地面を擦りながら前へ持って行き、最後は両足をそろえるような姿勢で投げる。この工夫をすれば、投球の勢いを殺さずに飛距離を出し、なおかつ両足も地面から離れない、というわけだ。

 でも、本当に? 本当に、本当に、その後ろ足、地面を擦り切ってると言える??

 浮いてない? 実は、浮いてない? ほんの一瞬、浮いてない?

思い出した。そう言えば昔、似たような主張をした覚えがある。あるチームで練習をした時、ウォーミングアップで1タッチの鳥かごをやり、私は中でオニ役だったが、外でパスを回すひとりが足をボールにくっつけたまま、
1タッチでクイックイッとL字を描くように、右と見せかけて左へパスを送り出した。軽やかなフェイントに引っかかった私は...、

「離れてない? 今、クイッの時足が離れてない? 2タッチした! 交代、交代!」

1回目の地団駄は、みんな笑って答えてくれる。でも気をつけてほしい。二度、三度と繰り返すと、

「.........。」

だいたいこんな空気になる。気をつけて。引き際、大事。
件のロングスローも、厳密に言えば、何回かに1回は足が地面から離れている気はする。ならば! 副審の方には、腹ばいになって足元をチェックしていただこうか。
あるいはプレミアリーグで数ミリのオフサイドさえ指摘できるという、エキサイティングなVARシステムを使い、「足浮いた!」とゴール判定をひっくり返そうか。

ピッチ内そっちのけでスローワーの足元を撮る、ロングスロー監視カメラを置けば、不可能ではなさそうだ。あっ、1ミリ離れた! 抜群の精度が期待できる。ただし、おすすめはしない。
「.........。」こんな空気になるだろうから。

「まあ、大きく離れてなければ、いいでしょ」「大きくってどのくらい?」「大きくは大きくだよ」。サッカーはその辺、とても大雑把なスポーツだ。VARの出現以降、競技規則もだいぶ細かくはなったが、それでも依然として主観任せの部分は多い。
最終的には「だってサッカーだもの」という魔法の言葉でバッタバッタと片付けられる。

実際、「ロングスローの後ろ足が微妙に浮いたからファウルスロー」と判定される場面はまったく見たことがないので、多少の誤差はOKなのだろう。サッカーだから。
それにしても、なぜ高校サッカー選手権では、これほどロングスローが流行るのだろうか。Jリーグでもまったく見られないプレーではないが、圧倒的に高校サッカーのほうが多い。

1/10(日) 11:20配信 スポルティーバ
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9ac3d595b5e2e9b2ddffac2cf9c64b06f209f4b

写真
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2021/assets_c/2021/01/longthrow-thumb-500xauto-246707.jpg