このラジコにあわせるように、テレビ視聴率やラジオ聴取率を調査するビデオリサーチ社も、聴取率調査の方法を変えました。
20年4月からサンプル数を5000に増やし、ウェブ調査にチェンジ。さらにラジコのデータを用いて、日々のラジオ聴取状況を推計する「ラジコ365データ」も始まりました。

これまでの調査は年に6回で、それも6週間のデータしか分かりませんでしたが、現在はリアルな数字が分かるようになりました。
聴取人数も把握できるようになり、例えば昨年のコロナ禍で在宅率が高くなった4月20日の週には、首都圏民放5局のトータルの週別平均聴取人数(1分あたり)が約90万人と、ピークに達しました。

ラジコの成功に歩調を合わせるように、ポッドキャストなど、さまざまな音声コンテンツが増えています。Voicy(ボイシー)やhimalaya(ヒマラヤ)など、YouTubeのような投稿型の音声コンテンツも普及。激しい競争になっています。

テレビ、パソコン、スマホなど、視覚に訴える映像メディアの現状は飽和状態だといえます。どのメディアも24時間を奪い合う中、ラジオをはじめとした音声メディアは、「ながら聴取」が可能な点がキーポイントのようです。
あるラジオ局関係者は「パソコンに向かうと同時に、スマートスピーカーでラジオや音声コンテンツを聴いています。一般的に、目はかなり酷使されていますが耳にはまだ空きがあり、可能性があると思っています」と話しています。

調査会社デジタルファクトによると、19年のデジタル音声広告市場規模は7億円ですが、20年には2倍以上の16億円、さらに25年には420億円に達すると予測されています。
ラジオ大国の米国でも、ポッドキャスト市場が急成長。デジタル音声広告の市場は18年に約2500億円、19年には3000億円を超えました。
日本でもこの市場には熱い視線が送られており、関係者によると、大手ファストフードチェーンがラジコの音声広告をターゲティング配信したところ、ネットのバナー広告よりも高い来店効果があったというデータもあるようです。

古くて新しい音声コンテンツ。放送と通信が融合する5G時代には、ラジオ局を中心に、他業種からの参入も含めて、ユーザー獲得の厳しい戦いが繰り広げられそうです。

<ポッドキャストとは>

ネット上で音声ファイルを公開する仕組みですが、音声コンテンツ配信サービスのほか、その番組を指す場合もあります。
アップル社のオーディオプレーヤー(ipod)と放送(Broadcast)の造語で、音声コンテンツにはさまざまな形態があります。

ラジオ局もニッポン放送の「poddog」、J−WAVEの「SPINEAR」、エフエム東京系ネットワークJFNの「AuDee」など音声配信に力を入れています。
さらに、音楽配信アプリのSpotify(スポティファイ)も、19年からオリジナルのポッドキャストを配信。アップルミュージック、アマゾンミュージックも参入し、裾野が広がっています。

16年に始まったボイシーやヒマラヤ、ラジオトーク、スプーン、スタンドエフエムなど投稿型の音声コンテンツも増えています。

◆竹村章(たけむら・あきら) 1987年入社。販売局、編集局地方部などを経て文化社会部。放送局などメディア関連の担当が長い。
テレビ特集ページ「TV LIFE」を立ち上げたほか、現在も続く「ドラマグランプリ」の創設にかかわった。テレビ出演も多く、過去にはテレビ朝日系「ワイドスクランブル」にレギュラー出演していたほか、現在は日本テレビ系「ミヤネ屋」に出演。