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キー局の中でも、テレビ東京は子ども向け番組の数が頭一つ抜けて多い。『ポケットモンスター』『しまじろうのわお!』といったアニメをはじめ、『おはスタ』『ファンファンキティ!』といった非アニメ番組も豊富だ。昨年4月からは赤ちゃん向け番組『シナぷしゅ』のレギュラー放送を開始。0〜2歳児を視聴対象に据え、注目されている。これまでNHK・Eテレの独壇場だった赤ちゃん向け番組に、テレビ東京はなぜ挑んだのか。
平日の朝に放送されている『シナぷしゅ』のターゲットは、「0歳から2歳までの赤ちゃん」。視聴率の調査対象は満4歳以上なので、テレビの「飯のタネ」を無視した冒険的な番組だ。
番組を企画した飯田佳奈子プロデューサーは、「朝の30分枠で子ども向け番組を作れば、スポンサーは絶対ついてくれるだろうという確信はありました」と話す。
営業の経験が長く、産休復帰後、自分の子に見せる番組を作りたいと『シナぷしゅ』を企画した。
「私が営業にいたときに、子ども向けのアニメ番組に広告を出したいという問い合わせが意外と多かったんです。でも、アニメは製作委員会に出資している会社が提供スポンサーになるので、ほかの企業のCM枠はない。そこで朝の30分枠で子ども向け番組を作れば、スポンサーは絶対についてくれるという確信はありました。あとは商品化や配信で売り上げを立てられるなと」
いざ番組が始まってみると、やはり視聴率は高いとは言えなかった。開始当初より倍増はしているが、12月時点の個人視聴率はおよそ0.4%で、同時間帯のNHK・Eテレの赤ちゃん向け番組『いないいないばあっ!』のおよそ1.3%と比較しても半分にも満たない。その一方で、飯田氏の読み通りスポンサーはすぐについた。
「スポンサーの一つ、タマホームのCMソングを子どもたちが覚えて歌ってくれたり、他の番組でそのCMが流れると、『あ、シナぷしゅだ!』と言ってくれたりという反応もあるそうです。子どもや赤ちゃんは番組のCMまでコンテンツとして見てくれていると評価してくださっています」
タマホームの狙いは、20代の子どもがいる夫婦に新築の家を建ててもらうこと。『シナぷしゅ』によってあの印象的なCMソングが0〜2歳児に浸透し、広告主が是が非でもCMを届けたいその親にまで深く刺さる番組となっている。
テレビ東京は現在でも視聴率、CM収入、番組制作費のどれもが他のキー局の半分以下。視聴率が低いため、CM収入を得にくいという構造的な問題を抱えている。視聴率にしても制作費にしても、これだけ他の4局と差があると、数字の取れるキャスティング、大人数でのロケ、精緻なCG加工などの正攻法で戦えば、つぶれてしまうだけだ。
このテレビ東京の戦略の強みが表れたのが、11月に公表された今年度の第2四半期決算だ。新型コロナ禍で、経済は壊滅的なダメージを受けた。その影響はリーマン・ショックをはるかに上回り、テレビ各社も大幅な減収となるなか、テレビ東京はしぶとく持ちこたえている。
単体(関連会社などを除いたテレビ局のみ)の営業利益をみると、テレビ朝日とTBSは赤字に転落。フジテレビもわずか1億円とギリギリの黒字。日本テレビは91億円の黒字と王者の貫禄だが、テレビ東京も10億円の黒字、前年比では日本テレビよりも減り方がはるかに少ない。またCM収入の前年比では、キー局5社の中で最も減少率が少なかった。
景気が後退すると企業が真っ先に絞るのが広告費といわれているが、それでも出稿を継続するのは効果が確実に上がる広告枠に限られる。そうした苦境において、テレビ東京の確実にターゲットに刺さる戦略は強いことが証明された。
テレビ東京の制作費の少なさは業界でも有名だ。
飯田氏によると『シナぷしゅ』の制作費は「びっくりするくらい少なくてこれじゃとてもできない。あと20倍ほしい」と思ったそうだ。それを支えてくれたのが逆境をくぐり抜けてきた先輩たち。「大丈夫、何とかなるし、何とかしてこそのテレビ東京だ」とさまざまな助言をしてくれたという。
テレビ東京には制作費が少ない分、よりアイデアに重きを置くという風土ができあがった。
飯田氏も、「テレビ東京はアイデアをすごく評価して背中を押してくれるんです。社員が熱意を持ってぶつかれば、外部の人もより大きな力で返してくれます。みんな楽しんで、やりたいことをやっているという感じです」と話している。
その結果、『シナぷしゅ』をはじめ『家、ついて行ってイイですか?』『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』『勇者ヨシヒコ』『孤独のグルメ』など、お金はかけていないが、妙に心に残りディープなファンを獲得した番組をいくつも世に送り出した。
(長文の為以下リンク先で)