◆大差も初優勝のプレッシャー

一方、急失速した創価大の小野寺には、何が起きていたのだろう。10区序盤は1km3分ほどのペース。だが10kmを超えた付近でフォームが乱れ始め1km3分10分ほどになると、以後は急激に速度が落ちていったのだ。駒大に抜かれ2位で倒れ込むようにゴールインすると、担架に乗せられ酸素吸入を受けた。榎木和貴監督(46)は、試合後こう語っている。

「(脱水症状などは)大丈夫と聞いている。(失速の原因は初優勝の)緊張からくる精神的なものだったと思います」

自身も早大のランナーとして箱根駅伝に出場した、マラソン解説者の金哲彦氏が語る。

「9区終わった時点で3分以上の差があれば、普通は逆転できません。駒大のアンカー・石川君が、ペースを落とさず走り続けたのが良かった。おかげで、急にペースを落とした創価大の小野寺君の後ろ姿が見えてきました。力が湧いたでしょう。前走者が見えると見えないのでは、選手のモチベーションがまったく違いますから。

創価大は、残念ですが自滅としか言いようがない。3分以上の大差があったんですから。小野寺君が余裕を持ち、ペースを落とさなければ逃げ切れたはず。ハイペースの石川君の姿を背後に意識し、ガクッと気持ちが落ちてしまったのかもしれません。結果として、10区の走者の中で最下位という大ブレーキになってしまいました」

試合後、創価大の榎木監督はこう語っている。

「今日の悔しさを一生忘れることなく、今後の競技人生に生かしてほしい。卑屈になることはない。この経験があったからこそ、将来の小野寺があると言えるよういかしてほしい」

歴史ある箱根駅伝。優勝への壁は、われわれの想像よりもはるかに高いようだ。

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