【東京五輪の主役候補 知られざる素顔と実力】

 阿部一二三(柔道66キロ級・23歳)
 阿部詩(柔道52キロ級・20歳)

 ◇  ◇  ◇

 柔道界では初の「きょうだい代表」とあって、期待は高い。

 兄の一二三は同階級の丸山城志郎との24分にわたる激烈な代表決定戦を制し、66キロ級の代表が決定。妹の詩も2020年2月のグランドスラム・デュッセルドルフで優勝し、52キロ級の五輪切符を掴んでいた。

 柔道は日本のお家芸。「金メダル以外はメダルではない」ともいわれている。2人にかかる重圧は並大抵ではないものの、金メダルの可能性は高いという。

 柔道の取材歴も多いノンフィクションライターの柳川悠二氏は「五輪を勝ち抜くより、国内で代表になる方が難しい」と、こう話す。

「17、18年の世界選手権王者の阿部一二三にとって、最大のライバルが19年王者の丸山でした。12月13日に行われた丸山とのワンマッチは、国内外合わせた事実上の66キロ級頂上決戦と言っても過言ではないでしょう。阿部の成長ぶりも印象的です。豪快な投げ技を得意とする半面、スタミナと駆け引きの部分で不安視されていたが、丸山とは24分にわたる大激戦。自分のスタイルにこだわるだけでなく、相手の動きを封じたり、いなすうまさも身に付けた」

 妹の阿部詩も、国内激戦区といわれた52キロ級でライバルたちを抑えて代表切符を手にした。東京五輪で同級の補欠に入った志々目愛は17年の世界選手権、そしてグランドスラム3大会で優勝。48キロ級に転向した角田夏実も、52キロ級時代は16年グランドスラム・東京、18年ワールドマスターズ、18年アジア大会で金メダルを獲得している。誰が代表になってもおかしくなかった戦績の持ち主たちだ。

「一二三も詩も、相手を得意とする担ぎ技の型にはめ、きっちり投げ切る柔道ができる。こうした柔道は外国人選手に多い変則的なスタイルに強い。休まず攻め続けるので、指導の差で負けるという心配も少ないでしょう。きょうだい仲も良いので、メンタル面での相乗効果も見込めます。阿部詩はかつては畳の上での所作も兄を参考にしていたほどですからね」(柳川氏)

 一二三は丸山との試合後、「(妹の詩には)お待たせ、という感じ。『2人で金メダルを取ろう』とようやく言えるようになった」と笑顔。詩はそんな兄の勝利の瞬間に泣き崩れ、自身のツイッターで「おめでとう。尊敬します。もっと上を目指し2人で優勝します」とつづっていた。

 東京五輪では66キロ級と52キロ級はいずれも7月25日に予定されている。

 互いが互いのブースターになれば、きょうだい同時金メダルも射程圏内だ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210101-00000002-nkgendai-spo