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隆盛を誇ってきたAKB48グループに大きな陰りが見える。象徴的だったのは、2020年12月8日に結成15周年という記念すべき節目の年を迎えたにもかかわらず、19年まで11年連続で出場していたNHK紅白歌合戦に落選したことだ。ただ、人気の下降は19年の早い段階で進んでいたと、アイドルウォッチャーの北川昌弘さんは指摘する。

「紅白に関しては、そもそも19年もよく出られたなと思いました。19年3月にNHK−BSでの冠番組が終了していて、すでに局としてAKB48からは引き気味でしたし、首をかしげる人は多かった」
中略

「AKBが出てきた初期は、ハロプロなど既存のグループはあったとはいえ、競合がいないアイドルとして突出した存在でした。ですが、妹分と言われる乃木坂46など坂道グループが台頭し、他のグループアイドルも急増したことで、ファンやアイドルを目指す人にとっての選択肢が大幅に増えた。『AKBがすべて』の時代ではなくなっていたんです」

今年の紅白には、AKB48グループの出場はゼロ。対して、坂道グループは櫻坂46、乃木坂46、日向坂46と3グループ出場する。
アイドル業界の変遷に加えて、社会の変化もAKB48グループにとって逆風だ。アイドル評論家の中森明夫さんも「現状は厳しい」と話す。

「AKBの最大の魅力は、『会いに行けるアイドルグループ』であったことです。専用の劇場があって、お客さんが直接会いに行けた。それが春先からの新型コロナ感染拡大によって、その根幹が揺らいでしまいました。大規模会場で握手会をしてきた『接触系アイドル』のAKBは、どこよりもコロナの直撃を受けたグループだと思います」

NGT騒動、コロナ禍に加え、近年のAKB48グループでは突出した知名度を持つ指原莉乃(28)の卒業が、この短期間に重なったことも大きいと見る。その後、名前と顔がすぐに浮かぶようなスターを作れなくなったことも人気低迷につながったと分析する。

「指原さんご自身が言うように、顔がかわいいわけでもない、歌がうまいわけでもない、ダンスが得意なわけでもないアイドルがトップに君臨し続けた。そのうえ指原さんはスキャンダルがあって左遷されながら、むしろそれをきっかけにのぼり詰めた特異な存在。指原莉乃というアイドルがあまりにも突出していたがゆえに、結果的にその後のAKBを衰退させたとも言えるんじゃないでしょうか」

紅白出場を逃し、テレビ露出が減ったとはいえ、アイドルの活躍の場は今、豊富にある。

「元々は劇場を中心に活躍していたわけですし、今はインターネット配信でいつでも露出できます。人数も多く抱えているし、古くからのファンも一定数以上いるので、現状を維持でき、コロナ禍を乗り越えられれば復活の芽も十分にあると思います」(中森さん)

2021年、起死回生の一手を見られるか。