0001征夷大将軍 ★
2020/12/18(金) 22:44:48.73ID:CAP_USER9https://number.bunshun.jp/articles/-/846283
ラグビーの大学選手権は、いよいよ負けたら終わりのノックアウトステージを迎える。今季はコロナ禍の影響で活動が制限されていた大学が多く、時期によって完成度にバラつきがあった。ただし、ひとつの敗戦を次戦への糧としている大学が多く、「学習能力」が勝敗を分けそうな気配がしている。
早慶戦敗北も…“上り調子”の慶応
その観点から、今季の慶応義塾大学はかなり魅力的だ。11月23日の早慶戦に11対22と敗れたが、12月6日の帝京戦では後半48分に劇的な逆転トライを決め、30対25で帝京を寄り切ってしまった。そして1週間後の大学選手権3回戦では、京都産業大相手に危なげなく勝利を収めた。
早慶戦の敗因は、11月のコラムでも書いたが、敵陣22mに入ったときのラインアウトからの得点率の低さにあった。早慶戦では22m内でのマイボールラインアウトからの得点割合は5分の1。バックスの得点能力が高いとは言えない状態で、敵陣深い位置でのマイボールラインアウトは慶応にとっての生命線である。しかし早稲田にうまく対処されたこともあり、得点に結びつけることが出来なかった。
ところが、帝京戦で慶応は驚異の学習能力を見せた。敵陣22m内でのラインアウト、慶応は6度の機会があり、そのうち5度も得点に結びつけたのだ(ラインアウトから相手の反則を奪い、そこからまたキックでラインアウトを選択した場合は、ひとつのシチュエーションと数える)。
そのうち3本はFWがしつこく近場を攻めて7フェイズ、8フェイズ、最後の逆転トライは12フェイズでトライをもぎとった。残りの1本は統制の取れたラインアウトモールのトライ、もうひとつは相手反則を奪ってのPGによる3点である。
早慶戦での反省から正しい解を導き出し、日吉で正しい練習が行われていることがうかがえる。ゴール前での慶応のしつこいアタック、というよりは「人の塊」は迫力を増しつつある。いま、慶応は上り調子だ。
慶応に敗れた明治だが……
その慶応に敗れたのが明治だった。11月1日の慶明戦で、明治は受けた。慶応は対抗戦初戦で焦点を絞り切れずに筑波に敗れていたため、明治には精神的優位があったと見る。それは、油断にもつながる。
対する慶応はLOで主将の相部開哉、FLの山本凱、CTBの三木亮弥らが、黄金期の慶応を彷彿とさせる魂のタックルを連発、明治は接点で食い込まれ、反則を連発した。最後は逆転のPGを決められ、12対13で敗れた。この時点での明治は、意外にも脆かったのである。しかしこの後、明治は学習能力を見せつける。
間違いなく、大学選手権の本命である
11月22日の帝京戦では、前半は後手を踏んだものの、慌てることなく自分たちのアタックを遂行し、39対23と圧勝する。ただし、粗雑なパスが時としてピンチを招いていたこともあり、早明戦では軽いプレーが命取りになると見ていた。しかし、いざ早明戦になってみると、軽いパスは1本しかなかった。パスの精度にこだわり、しっかり練習をしてきたことがうかがわれた。そしてなにより、明治は早明戦に全霊を傾け、早稲田をリスペクトし、研究し、対策を怠らなかった。
明治は、早稲田の長所であるラインアウトを崩壊させた。身長190センチのLO片倉康瑛、188センチで主将を務めるNo.8の箸本龍雅の存在自体が早稲田にプレッシャーをかけ、ミスを誘発した。この日の早稲田のラインアウトは13本中7本の成功。現代ラグビーで、この成功率では勝つことは難しい。早稲田ファンからは再三再四、ため息が漏れた。さらに早明戦での明治は情け容赦なく、ラストまでフィットネス、メンタル両面で切れることなく、最後も左隅にトライを決めてとどめを刺した。34対14。圧勝である。今季の明治は学習能力が高く、勤勉だ。間違いなく、大学選手権の本命である。
昨季の早稲田が「早明戦に負けてから、優勝するまで」
さて、早稲田はいまだ学習能力を試される機会がなかった。学習能力以前に選手の能力そのものが高く、帝京、慶応を退けていた。早明戦での早稲田は、特別な対策を施したようには見えず、あくまで大学選手権を見据えたうえで、現在地を知るために戦っているように見えた。1990年代のピュアな感情がほとばしる早稲田を記憶している者としては、やや寂しい気はするが、これも時代の流れだろう。
早明戦は、早稲田の脆弱性をあぶり出した。不安定なラインアウト、前半のスクラムにおける駆け引きでは後手を踏み、BKのアタックは明確な意図を欠いた。この2週間は、早稲田にとって学習能力が試される時間だった。相良南海夫監督の著書『早稲田ラグビー 最強のプロセス』によれば、昨年も早明戦に敗れた後から、本格的な勝つための「仕込み」に入ったことが分かる(長文の為以下リンク先で)