優勝１２回、出場８９回。ともに箱根駅伝歴代３位を誇る名門の日大が歴史的な敗戦を喫した。ハーフマラソン（２１・０９７５キロ）の上位１０人の合計タイムで１０枠の本戦出場権を争った予選会。高速レースの流れに乗り遅れ、まさかの１８位という結果に。１０位通過の専大とは９分１５秒の大差があった。今回を含め予選会で４度、敗退しているが、１１位が過去最低順位（第８８、９４回）。今回はチーム史上最悪の結果だった。
前回の箱根駅伝は１８位。６年連続でシード権を逃した結果を受け、６月１日付で武者由幸前監督（３７）が退任し、関東学生陸上競技連盟の名誉会長で日大ＯＢでもある青葉昌幸監督（７８）が急きょ就任した。１９９０年度に大東大の監督として史上初の学生駅伝３冠に輝いてから３０年。大東大監督を退任した００年以来、２０年ぶりに現場の最前線に復帰した。「５か月ではチームの立て直しが間に合いませんでした。これほどの高速決着になるとは予想できず、私の読みも良くなかった」と大ベテラン監督は敗戦を振り返る。
本戦１８位から予選会１８位と大幅に下落した日大にとって、唯一とも言える光明が小坂の存在だ。
予選会個人８１位。チャールズ・ドゥング（２年）に次いで、チーム２位の日本人トップとなり、関東学生連合に選ばれた。「来季の日大に追い風を吹かせられるような走りをしたい。箱根駅伝の経験をチームに持ち帰りたい」と意気込む。
今季、小坂は驚異的な成長を遂げた。９月に１万メートルの自己ベストを３１分３２秒９５から２８分５５秒３６へ２分３７秒５９も更新。４００メートルトラック２周分以上も縮めた。「夏合宿で練習の消化率は１００％。秋になれば必ず結果を出せると自信を持っていました」と話す。青葉監督も「小坂のようにしっかり練習をできた選手は結果を出している」と絶対の信頼を寄せている。
物心がついた時から箱根駅伝を走ることを夢見てきた。４、７区のコース沿道の二宮町出身。「小さい頃から正月は沿道で応援していました。大学生になったら僕も走りたいと思っていました」と目を輝かせて話す。今春、日大を卒業した兄の太我さん（２２）も１７年大会で８区を走った（区間２０位）。兄弟で目指してきた夢舞台は目の前まで近づいている。
藤沢翔陵高時代は目立った成績を残せなかったため、スポーツ推薦の勧誘はなく、指定校推薦で静岡・三島市の国際関係学部に入学。東京・稲城市のチーム本拠地から離れた環境で、２〜３人の数少ないチームメートとともに地道な練習を積んだ。少しずつ力を蓄え、２年時に文理学部へ転部し、本拠地の選手寮に入った。恵まれた環境でさらに練習に打ち込み、３年時に大きな飛躍を果たした。
連合チーム内で予選会個人成績は１０番目。「出走メンバーに選ばれるように気を引き締めていきます。希望区間は７区です」。故郷に錦を飾ることを熱望する。
主催の関東学生陸上競技連盟は新型コロナウイルス感染防止対策として駅伝ファンに向けて「今回はテレビなどを通しての応援を頂ければと思います」と呼びかけている。「地元を走って家族や同級生に頑張っている姿を沿道で見てもらいたいけど、今回はしようがありません。全力で走るだけです」と落ち着いて話す。
予選会が終わった後、小坂は副将に就任。主将の山本起弘（３年）とともに新チームを率いる立場になった。「今、日大は弱い。その現状にチーム全員が悔しさを感じているし、来季は絶対に巻き返す、と思っています」と言葉に力を込める。２０２１年は創部１００周年。メモリアルイヤーの新春、日大の復活と自身の夢実現のため、全身全霊で箱根路に挑む。（竹内達朗）
◇日大陸上競技部 １９２１年創部。箱根駅伝には２２年の第３回大会に初出場。４連覇を含め、優勝１２回。出雲駅伝は優勝５回、全日本大学駅伝は優勝３回。学生３大駅伝２０勝は歴代３位。タスキは桜色。主な陸上部ＯＢはマラソン元日本記録保持者で五輪に３度出場した宇佐美彰朗氏（７７）、明大の山本佑樹監督（４３）、俳優の和田正人（４１）。リオ五輪男子４００メートルリレー銀メダルのケンブリッジ飛鳥（２７）ら。
2020年12月5日 14時30分スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20201205-OHT1T50122.html
