0001砂漠のマスカレード ★
2020/12/04(金) 08:02:23.29ID:CAP_USER9しかし、ソフトバンクの工藤公康監督は8回、スパッとピッチャーを代えました。結局、ソフトバンクは4対0で完勝し、日本シリーズ4連覇に王手を賭けました。点差以上の実力差を感じた試合でもありました。
「ノーヒットノーランやるんじゃないかと思ったけど、さすが工藤(公康)だね。ひとつ勝たせてしまうと、どう転ぶかわからない。あれは短期決戦の恐ろしさを知っている男の采配だね」
開口一番、そう語ったのは元中日監督の森繁和さんです。2007年には落合博満監督の下、一軍バッテリーチーフコーチとしてチームの53年ぶりの日本一に貢献しました。工藤監督とは西武で7年間一緒にプレーしました。
あらためて感じる「岩瀬の13球」の凄さ
元中日ドラゴンズの岩瀬仁紀選手[Photo by gettyimages]
森さんと言えば忘れられないのが、北海道日本ハムと日本一を争った2007年の日本シリーズで見せた采配です。
3勝1敗と王手をかけて迎えた第5戦、8回までひとりの走者も許していなかった山井大介投手をスパッと代えたのです。ナゴヤドームが騒然となったのは言うまでもありません。コーチに采配という言葉は似つかわしくないかもしれませんが、落合監督は投手起用に関する一切を森さんに任せていました。
スコアは中日の1対0。山井投手が弱音を吐いたのは右手の血マメが悪化した8回が終了した時点でした。
「もうダメです。あとは(クローザーの)岩瀬(仁紀)さんに……」
「本当にいいんだな?」
「はい。お任せします」
森さんが落合監督にピッチャー交代を進言したのは、この直後でした。
「正直、あれはものすごくやり辛かった」
振り返って岩瀬投手は語りました。
「これまで勝っている場面で“エーッ! ”という声を聞いたことがなかったものですから。まるで何度か(救援に)失敗した後のマウンドのようでした」
グラウンドを包む異様な雰囲気の中、岩瀬投手は金子誠選手、高橋信二選手、小谷野栄一選手の3人を、それぞれ空振り三振、レフトフライ、セカンドゴロに仕留め、中日は2人がかりの完全試合で日本一の座を掴み取ったのです。
直後に森さんがポツリと漏らした一言が私には忘れられません。
「あれは本当に危ないボールだった。金子がポンと見送った初球の甘いスライダー。あれはホームランになってもおかしくなかった……」
金子選手が見送った“失投”を森さんは見逃してはいなかったのです。プロフェッショナルの視点に感動すら覚えたものです。
今年の日本シリーズ終了後、その森さんに岩瀬さんがこう訊ねたそうです。
「あれがノーヒットノーランじゃなく完全試合でも、工藤さんは代えたんですかね? 外国人ピッチャーだし……」
森さんは、こう返しました。
「代えたと思うよ。外国人だからなおのこと代えたんじゃないかな。それにムーア自身、“もういっぱいいっぱい”だと思っていたはずだよ」
工藤監督は8回をリバン・モイネロ投手に任せ、9回には予定通りクローザーの森唯斗投手をマウンドに上げました。
しかし、その森投手が二死から丸佳浩選手にセンター前ヒットを浴び、3人がかりのノーヒットノーランはあとひとりのところで潰えてしまいました。
森さんは、その場面を見ていて、改めて岩瀬投手の偉大さを思い知った、と言います。
「9回表の時点でソフトバンクは4対0と4点のリード。森は普通に投げればいい場面なのに、ガチガチに緊張していたからね。ノーヒットノーランの引き継ぎで、あれだけプレッシャーを感じるのなら、パーフェクトゲームなら、どうなのか。
ましてウチは1対0だったからね。完全試合どころか、ひとりランナーを出したら、どう転ぶかわからない。そこで何食わぬ顔をして3人で抑えてしまったんだから、今さらながらにして岩瀬は大した男だと思うよ。あの試合では山井のことばかりに注目が集まるけど、もっと岩瀬のことを褒めてやらなくちゃね」
奇しくも背番号の数字と同じ岩瀬仁紀の13球――。“江夏の21球”とともに語り継がれるべき日本シリーズの名シーンです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c38495377922f555551b12f879320910d8b9811f
12/4(金) 6:02配信