0001征夷大将軍 ★
2020/11/27(金) 20:16:34.37ID:CAP_USER9「絶対、前! 絶対! 絶対! 絶対!」
快速ウィングの古賀が叫び続けるので、スタンドからは思わず失笑が漏れる。スタンドとピッチの距離が近い秩父宮ならではの光景である。さて、伝統の早慶戦はこのラインアウトが見どころであり、勝敗の帰趨を左右した。ラグビーにおいて、ラインアウトは研究しがいのあるセットプレーで、アタック側は様々なバリエーションが用意できる。ただし、ディフェンス側も相手を徹底研究し、対策を練ることが可能だ。
1980年代から、ラインアウトはチームの「ラグビーIQ」の指標ともいえ、慶応、早稲田、そして昔の旧対抗戦では、東京大学がラインアウト巧者ぶりを発揮していた。どうしても、偏差値という言葉が浮かんでしまうが、それよりも「オタク気質」が発揮されやすいのがラインアウト研究なのだろう。80年代から、慶応は伝統的にラインアウトからのアタックがうまい。ラインアウトモール、ダミーモール(モールと見せかけて、サイドをアタックする)などバリエーションが豊富である。
●慶応が仕掛けた「あまり見ないプレー」
この日、慶応唯一のトライとなったのは、後半19分の早大陣ゴール前からのアタックで、しつこく、しつこくサイドアタックを繰り返し、ナンバーエイトの高武俊輔がトライを挙げたが、ここで慶応は「モール再構築」という最近ではあまり見ないプレーでチャンスを広げている。
モール再構築とは、いったんラックになったボールを、FW陣がフォーメーションを形成し、ボールを持ち上げて再度モールを形成するプレーだ。このプレーは90年代に明治がよく見せていたパワープレーで、おそらく早稲田は創部してから、一度も使ったことがないプレーではないか。
慶応は慶明戦のあと、このモール再構築の習熟に時間をかけたと見え、合計3度、このプレーを選択し、ひとつをトライに結びつけた。研究の成果が感じられた瞬間である。
ただし、11対22で迎えた後半30分過ぎから得た2度のラインアウトでは、トライを挙げられなかった。特に最後のラインアウトでは、モールを形成しやすい後方ではなく、前から2番目に立ったフランカーの今野勇久にスピードボールを投入した。
すると早稲田のFW陣は、モールの核となる部分に目がけ、矢を束ねるようにして一気にプッシュ。モールを作らせず、最終的には早稲田ボールのスクラムに変わった。窮地をラインアウト・ディフェンスで脱したのだ。この時の、慶応のサインには議論の余地がある。J SPORTSの解説を務めた藤島大氏は、「慶応は後ろに投げられなかったんですかね」とコメントしていたが、この時ばかりは珍しく前に投げた。動きを見ていると、あえて前に投入したようだ。
このあと、どんなオプションを用意していたのだろうか? ダミーモールからのサイド攻撃という感じがしなくもないが、こういう時に限って観客席にいるため、試合後に選手に質問できないのがもどかしい。
慶応は大学選手権に向け、ラインアウトからの得点能力を向上させる必要がある。ボールの蹴り合いや、カウンターアタックなどのアンストラクチャーからの得点はあまり期待できないため、どうしてもセットプレーからの得点に頼らざるを得ないからだ。アメリカンフットボールでは、相手陣20ヤードに侵入した場合の攻撃を「レッドゾーン・オフェンス」と呼び、このエリアから得点にどれだけ結びつけられたかがパーセンテージで表される。ラグビーでも22mライン内側の攻防があるが、相手ボールのこともあるため、アメフトほど確率を明示できない。ただし、相手ゴール前ラインアウトは、自軍投入であれば主導権があり、成功率が明示できる。
この日、慶応は5本のゴール前ラインアウトから、得点に結びつけたのは後半19分のトライ1本のみで得点率は20%。この確率を高めることが、大学選手権で慶応がどこまで勝ち上がれるかを左右するだろう。
一方の早稲田は、今季のラインアウト・ディフェンスが驚くほど充実している。当然のことながら相手によって対策が違い、それが功を奏している。
(長文の為以下はリンク先で)
ナンバーweb 2020/11/26
https://number.bunshun.jp/articles/-/845974