フジテレビを救うのは、お笑い界の大物・ダウンタウンの松本人志(57才)かもしれない。ここ最近、『土曜プレミアム』で松本による実験的なコンセプトの特番が“量産”されている。その背景とは? 
コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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21日夜、フジテレビの特番枠『土曜プレミアム』で、『まつもtoなかい〜マッチングな夜〜』が放送されます。同特番は「松本人志と中居正広が会わせてみたい2人をマッチング」というコンセプトのトークバラエティ。
甲本ヒロト×菅田将暉、ローラ×フワちゃんなどの新鮮かつ刺激的なマッチングで、「どんなトークになるのだろう……」と放送前から注目を集めています。  同特番が放送される『土曜プレミアム』は、映画、スペシャルドラマ、ドキュメンタリー、バラエティなどの多彩なラインナップが売りのフジテレビ最大の特番枠。
ただ、近年は日本テレビの『嵐にしやがれ』と『土曜ドラマ』、TBSの『世界ふしぎ発見!』と『新・情報7daysニュースキャスター』、テレビ朝日の『サタデーステーション』、テレビ東京の『出没!アド街ック天国』などに押されて、以前ほどの注目を集められずにいました。  

今年は明石家さんまさん、内村光良さん、有吉弘行さんらの冠特番など、今週末まえに23本のバラエティ特番をラインナップ。
例年以上にバラエティの割合が高く、なかでも松本人志さん絡みの特番は23本中6本を占めています。  
言わば、「4回に1回以上、松本人志のプレミアムな特番が放送される」という『土曜プレミアム』ならぬ“松本プレミアム”の状態。なぜこれほど松本人志さんの特番が増え、土曜夜のフジテレビを救おうとしているのでしょうか。

▪�u2020年だからこそ」の実験的な特番

 今年、『土曜プレミアム』で放送された松本さん絡みの特番は、1月11日の『人志松本のすべらない話』、5月30日の『人志松本のすべらない話ザ・ベスト』、6月13日の『IPPONグランプリ』、8月1日の『HEY!HEY!NEO! MUSIC CHAMP』、10月24日の『まっちゃんねる』、11月21日の『まつもtoなかい〜マッチングな夜〜』の6本。
『土曜プレミアム』定番の『人志松本のすべらない話』と『IPPONグランプリ』から、ゴールデン・プライム帯で初放送の『HEY!HEY!NEO! MUSIC CHAMP』、挑戦的なコンセプトの『まっちゃんねる』『まつもtoなかい〜マッチングな夜〜』まで番組内容の幅が広く、そこに松本さんの意欲が垣間見えます。  

特にこの1か月間で放送する『まっちゃんねる』『まつもtoなかい〜マッチングな夜〜』は、「どんな番組なのかわからない」「先の展開が想像できない」という実験的なコンセプトの特番。
昨年までならありえなかった企画であり、松本さんが2020年だからこそ実験的なコンセプトの特番に挑んでいる様子が伝わってきます。  
では、なぜ松本さんは今年、実験的なコンセプトの特番に挑んでいるのか? その理由は主に下記の2つ。

 1つ目の理由は、今春以降、民放各局が10〜40代の視聴者に向けた番組を重視するように戦略を変えたから。『土曜プレミアム』も例外に漏れず、中高年層が好む報道・情報番組やドキュメンタリー、若年層は動画配信で見がちな映画よりも、バラエティの制作に力を入れはじめました。
その最前線にいるのが、フジテレビのバラエティと縁の深い松本さんなのです。  
2つ目の理由は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、笑いのニーズが増しているから。緊急事態宣言の発令による外出自粛、絶え間なく流れるコロナ禍のニュースなどで重苦しいムードに包まれ、今春以降「何も考えずに笑いたい」というニーズが高まっていきました。
実際、民放各局は8時間生放送に挑んだ『お笑いの日』(TBS系)を筆頭に、さまざまなお笑い特番を連発。松本さん自身もレギュラー番組に加えて多くの特番に関わるなど、「笑いの力で少しでも明るい気持ちになってほしい」というスタンスがうかがえます。

続く