https://tfm-plus.gsj.mobi/news/gdSjwzmzZi.html?showContents=detail
2020-10-25

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。10月25日(日)の放送は「村上RADIO〜秋のジャズ大吟醸〜」と題して、村上さんが所有するアナログ・レコードのなかから、まさに“大吟醸”の名にふさわしいジャズをセレクト。村上さんが愛聴してきたレコードや、「大好きなジャズ・ミュージシャン」と語るアーティストの曲など、秋に似合うさまざまなジャズをお届けしました。
中略

◆Grant Green「Red River Valley」
サックスの演奏が多かったので、ここで箸休めみたいな感じでギターものをかけます。グラント・グリーンのカルテットが演奏する「レッド・リバー・バレー」。ハービー・ハンコックのピアノが素晴らしいです。グラント・グリーンもいいけど、ハンコックのピアノがとても素敵です。ベースがレジー・ワークマン、ドラムズがビリー・ヒギンズという豪華なリズムセクションをバックに、肩肘張らないリラックスした演奏になっています。僕はこの『Goin’ West』というブルーノートのアルバムが昔から気に入っていて、愛聴していました。

僕はこのレコードに思い出があって……。あるとき、友達から「ジャズを聴きたいと思うんだけど、何か良いレコードを推薦してくれないかな。ギターが好きなんだけど」と言われたので、それで僕はこのレコードを買ってきて、プレゼントしたんです。そうしてしばらくたったら“街の噂”で、「春樹は自分がいらなくなったようなつまらないレコードを押しつけてきた」と彼が言っていたという話を、まわりまわって耳にしまして、けっこう傷つきました。僕はこの音楽が好きで、わざわざレコード屋さんに行って買ってきたんだけどね。それ以来、本やレコードを人に薦めることを遠慮するようになりました。人それぞれ好みってありますからね。

当時のジャズ喫茶は、難しい顔してジャズを聴くというイメージがあったから、軽くみられたかもしれない。軽いから悪いってわけじゃないのにね。この演奏でグラント・グリーンはシングルトーンのギターを弾いているんだけど、グラント・グリーンの最後のフレーズを受けて始まるハービー・ハンコックのピアノソロ、これがカッコいい。

ハンコックはこの頃、マイルズ・デイヴィスのグループでギンギンのジャズをやっていたんだけど、ここにきて今日は気持ちよく楽しくジャズをやろうかという感じで軽快に演奏しています。

全文はソースをご覧ください