かつて女性アナウンサーは、一定の年齢に達すれば退社するケースも少なくありませんでした。しかし近年は管理職になるケースも増加。「キクちゃん」の愛称で親しまれ現在、アナウンス室チーフアナウンサーを務めるフジテレビの西山喜久恵さん(51)に環境の変化などについてお話をうかがいました。

有賀・河野・八木の“花の3人娘”がひらいた道
――1992年に入社されたフジテレビ局内の雰囲気は、いかがでしたか。

西山喜久恵(以下、西山): 私は「ひょうきん由美」の愛称で知られた益田由美さんにあこがれて入社しました。自分で番組のプロデュースなどもする益田先輩のようになりたいという思いがあったんです。
当時は女性アナも男性アナと同じように仕事をしていましたが、その役割は限定的だった気がします。その中で88年入社の有賀さつきさん、河野景子さん、八木亜希子さんの“花の3人娘”が、華やかな時代を築かれ、女性アナの活躍の場が広がっていきましたね。

――当時は「女性アナ30歳定年説」も言われていました。

西山: 30歳が“賞味期限”と言われた時代も確かにありましたよね。実際に結婚を機に仕事を辞めたり、フリーになったりする先輩も多かったですが、30歳前後は人生の節目と重なる時期。それもあって盛んに喧伝されていたのでしょうね。
私自身は20代後半に「プロ野球ニュース」を担当し、その後は報道番組に携わる中で「30歳定年」は意識しないようになりました。そして仕事とプライベートを一生懸命やっていたら、ここまで来たという感じです。

フジテレビのことが本当に好きで入社して、仕事をすればするほどスタッフの方や、社風が「自分に合っているな」と思っていたので、何の迷いもなく――。すごく幸せだなと感じています。女性が働きやすくもなりましたし、企画や意見も通りやすい環境です。

いまだに残る間違ったイメージ
――アナウンス室チーフアナウンサーということですが、どのような仕事を?

西山: 後輩の勤務を差配したり、管理したりというデスク業務、新人やフジテレビの系列局の研修もしています。

――30歳定年説は聞かなくなりましたが、男性は男子アナと言われない一方、女性は変わらず女子アナと呼ばれ、タレントのように見られる状況は続いています。

西山: 女子アナと呼ばれることが当たり前の時代に入社したので、当初は違和感もありませんでした。それでも女子アナに関しては、ある時から女性アナと称されるようにもなった。我々も世間の方の意識も次第に変わってきているように感じます。
ただ、タレントさんのように見られる状況は今でもありますね。テレビでタレントさんと一緒に映る機会が多いので、そう見られる方もいらっしゃるのかな。取材先から電車で帰ろうとすると、「えっ、電車に乗るんですか?」と驚かれます。タレントさんのように車で送り迎えをされるという間違ったイメージがいまだに残っている。普通の会社員なんですけどね。

それでもよぎった30歳定年説
――先ほどプライベートも一生懸命というお話がありました。97年に結婚され、2007年に出産されました。変化はありましたか。

西山: 変わりました。結婚後、1年くらいで「プロ野球ニュース」の出演が終わり、次の担当予定の報道番組に出るまでの半年間、仕事がほとんど無かったんです。ものすごく焦って、しかもそれがちょうど29歳。「30歳定年説」が頭をよぎりました。でも主人から「もっと自由に色んなことを経験して、ゆったり構えていればいいんだよ」って言われて。今は知識を蓄える時期だと、考え方を切り替えることができました。励ましてもらったのは、すごく大きかったですね。

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