アルピニストとシェルパの娘との、世にも奇妙な「結婚生活」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52512?page=2

ネパールを舞台にした奇妙な結婚生活

野口: エベレストに登る前、体を高地に慣れさせるために、シェルパの家に寝泊まりしていたことがあって。向こうの家では、朝早くに女性が水を汲みに行き、火をおこしてお茶を淹れるところから一日が始まります。部屋は一つでみんな雑魚寝ですから、その様子を寝ぼけながらボーッと見ていたんですね。

その家では、朝の水汲みは、当時15歳くらいの女の子の仕事で、甲斐甲斐しく働く様子にグッときて、山の上で、お父さんに「あなたの娘にホレちゃったかも」といったら、「そうか、じゃ、下りたら持っていけ」と。高地で意識がふわふわしている状態で、こっちは冗談のつもりでしたが、それが大問題で。

島地: 向こうは本気で、結婚することになったとか?

野口: それで、山から下りてきたら村中が大騒ぎで、何かと思ったら「シェルパの娘と日本人が結婚するから祝っている」と。

島地: ははは、それはもう覚悟を決めるしかないよね。

野口: でも、ネパールの山奥で暮らすシェルパ族には「戸籍」なんてものがないから、その女の子も出生届が出されてなかったんです。日本大使館に相談しても、国際結婚にはペーパーが必要ということで取り合ってもらえず、仕方なくカトマンズに部屋を借りてその女の子を住まわせて、自分は日本から仕送りするという、極めておかしな関係になりました。

日野: 書類上は結婚してないのに仕送りはする。男気あふれる美談じゃないですか。

野口: ぼくも数ヵ月ごとにネパールに行ってました。でも、山奥の生活に比べるとカトマンズは大都会で、それなりの不労所得も入るものだから、会うたびにどんどんケバい女になっていくんですね。しかも、他に男ができたような雰囲気もあり、しばらくしてその関係は終わることになります。そんなわけで、今の結婚が1回目なのか、2回目なのか、説明するのがややこしいんです。