スポーツ報知
カヌー・羽根田、留学で得たやり遂げる力という財産…リレーコラム
羽根田卓也
ちょうど夏休みの時期でもあるので、今回は“勉強”の思い出について触れたいと思います。
高校までの僕はどちらかと言えば勉強嫌い。それが、卒業後に渡ったスロバキアで劇的に変わりました。21歳のときに、コーチの勧めで国立コメニウス大学に入学したのです。ところが…。
すぐに「これはムリだろ!」と頭を抱えました。そもそもスロバキア語は非常に難解で、日本語の辞書もありません。授業内容以前に、まずはカリキュラムや大学生活の流れが全くつかめないのです。試験日の決め方は? 夏休みはいつなのか? テスト期限を逃し、必修の授業を取り損ね…受けているのが何の教科かさえ分からないような状態でした。
クラスメートにどんどん話しかけ、「ご飯おごるから」と教えを請いました。大学の先生、コーチ、カヌーの同僚や先輩に至るまでアドバイスを求めました。中には厳しい先生もいます。「分からないのなら、スロバキア語を勉強してから大学に入りなさい」と突き放され、さすがに心が折れました。
日本に帰国した際は、専門書を手に入れるため、大きな書店に通いました。スポーツ法やコーチング理論をまずは日本語でひと通り勉強し、知識を蓄えてからスロバキア語に翻訳する。その作業を繰り返しました。いつしか語学力も向上し、熱意や努力を評価してくれる先生も増えていきました。
「若いときの苦労は買ってでもしろ」と言います。僕が大学で鍛えられたのは、まず、ずぶとさやタフな心であり、問題をあらゆる手段を講じて解決する力でした。
そして何よりも、何かに没頭してやり遂げるという一連の行動こそが大切で、後の人生に必ず生きるという教訓です。「なぜ練習時間を削ってまで勉強しなくてはいけないのか」と何万回も自問自答しました。でも、投げ出すことなく、卒業という目標を達成したとき、得たものはたくさんあったのです。学びの場は生かす殺すも自分次第。将来の目標が定まらない中でする勉強は、ともすれば苦痛かもしれませんが、与えられた課題を我慢してやりきるという行為自体、きっと大きな財産になるはずです。
◆羽根田 卓也(はねだ・たくや)1987年7月17日、愛知県生まれ。33歳。小学3年でカヌーを始め、杜若高を卒業後、単身スロバキアに渡る。2009年に国立コメニウス大学に進学し、同大学院を卒業。16年リオ五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで銅メダルを獲得。175センチ、70キロ。ミキハウス所属。
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