さらに広岡氏が、疑問を呈するのは、8回に増田をマウンドに上げるきっかけとなった4年目の堀岡隼人の起用である。青森山田高時代にセンバツ出場経験があるが、テストを経て2016年の育成ドラフト7位で入団した21歳。
3軍からスタートして昨年支配下登録されたばかりの堀岡が一死しか取れず、中谷将大の満塁弾などで7失点と炎上したことでゲームが壊れた。

「あの堀岡という若い投手が可哀そうだった。つまり2軍の選手。まだ1軍で投げるレベルの選手ではないのに起用された。そういう選手を使った方に責任がある。すぐに2軍に落とされ、下で登板したそうだが、巨人がずっと課題にしている育成という問題が、今回の野手の中継ぎ登板騒動の根底にある。
3軍を作り、その監督に二岡を据え、育成に本気になろうとしている球団、原の姿勢は評価できる。だが、現状は育てきれていない、教えきれていない。考えるべき点は、そちらの問題だろう」
 堀岡は翌日に2軍に落とされイースタンの横浜DeNA戦に登板している。

「聞くところによると、原は、“勝つためにやっている”“巨人がやっちゃいけないとか、そんな小さなものじゃない”とか、今回、野手を投手起用したことを批判している巨人のOBたちの声に反論しているらしいが、やり方が間違っている。
この作戦でリーグ優勝し、日本一になっても、それは巨人らしくない。今シーズン中には、原は川上さんの通算勝利記録を抜くだろう。彼には巨人の歴史に残る大監督になってもらいたいがゆえにあえて苦言を呈したいのだ」

 3度目の監督就任となった原監督は7月14日の広島戦の勝利で、監督通算1035勝目とし、長嶋茂雄氏を抜いて巨人の歴代2位の通算勝利数を記録した。巨人の監督通算勝利の1位は、川上哲治氏の1066勝で、その後、1048勝まで星を伸ばしている原監督は、あと19勝で偉大なるV9監督の記録を抜き去ることになる。
順調にいけば、来月には、そのメモリアルデーを迎えるだろう。

 広岡氏は、原監督と何度か直接、話をする機会があり、その際、「強いチームを作りなさい。そして名を残しなさい」と伝えたという。

 広岡氏は巨人のOBとして原監督に大きな期待を寄せている。だからこそ賛否論争の最中にあえて一石を投じる意味で、少数派とも言える反論を信念に基づいて口に出したのである。原監督が伝統のGT戦で繰り出した仰天采配の真の評価は、今シーズンが終わったときになされるとの声もあるが、決してそうではない。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)

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