会員制交流サイト(SNS)などで誹謗(ひぼう)中傷される被害が後を絶たない。フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラー木村花さん(22)が、ツイッターに誹謗中傷などを書き込まれた後に自ら命を絶った。同様に10年以上もインターネット上で無関係の事件の「犯人」とデマを流され、中傷された経験があるタレントのスマイリーキクチさん(48)は「言葉は人を死に追い込むことがある。被害者が迅速に救われる制度が必要」と訴える。(共同通信=沢野林太郎)

 ―ネットでどのような中傷を受けたのか。

 1999年のある日、所属する事務所のホームページが突然「殺人犯」「生きている資格はない」という匿名の書き込みであふれた。以前起きた殺人事件の現場と、自分の出身地が近いということだけで殺人犯だと誰かに決めつけられた。「家族を殺す」「家に火を付ける」と内容がどんどんエスカレートしていった。警察に相談したが、投稿者の特定が難しくたどり着くことができなかった。警察からは「ネットを見なければいい」「あきらめてくれ」と言われ、泣き寝入りするしかなかった。

 ―その後どうなったか。

 約10年たっても中傷はやまなかった。再び警察に相談したら、ネットに詳しい捜査員が親身になって協力してくれた。名誉毀損(きそん)容疑で投稿者のネット上の住所に当たるIPアドレスを開示させ、実際の住所と名前を突き止めた。犯人は約20人。一流企業のシステム担当者や大学職員や普通の会社員だった。動機は事実誤認による「悪を成敗する」「良いことをしようと思った」といった偏った正義感だった。自分の考えに似ている情報だけを集めて、間違った事実を自分で作り上げていた。投稿する前に考えてほしい。誤った正義感は暴力にもなることを。

 ―法律や制度の問題点は。

 自分で投稿者を突き止めようとすると裁判など複雑な手続きを踏まなければならない。多くの労力と時間、費用がかかる。私の場合は時間がかかったが、警察が協力してくれたから投稿者の特定ができた。この手続きを警察でなくても誰でも簡単にできるようにしなければならない。そうしないと被害者は泣き寝入りしたままだ。被害者の立場になった改正をしてほしい。相談や手続きをサポートしてくれる窓口が必要だ。

 ―被害に遭っている人へのアドバイスは。

 書き込みへの反論をする人がいるが、逆に中傷を増やしてしまうのでしないほうがいい。それよりも投稿画面を写真に撮り、ページのURLも記録して証拠を集めることが重要だ。悪質な投稿には法的手段を取るという態度を示すべきだ。

 ネット上に文字で言葉を残されると完全に消すことは難しく、心の傷も消えない。心ない言葉は刃物にもなり人を死に追い込んでしまう。包丁を振り回せば周りの人がけがをするのと同じ。自分の経験上、実際に誹謗中傷を書き込んでいる人はそれほど多くなかった。世界全体がみんな敵だと思わないでほしい。周りの人に相談して助けを求めてほしい。人を傷つけるのは人だけど、人を救うことができるのも人だから。

 スマイリーキクチ 東京都出身。タレント、俳優、全国でSNS被害についての講演活動をしている。

ソース 共同通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/b7d07d449a69add5fc9326c494c8f3e4fdab1a35?page=2