ある日本の指導者が、海外遠征で「お前の国はマフィアが子どもたちに野球を教えているんだろ」と言われてショックを受けたという話もある。

こうした日本独特の野球文化の背景には、日本のアマチュア野球の大会がほとんど「一戦必勝」のトーナメントで、負ければ後がないことも大きい。

中にはヤジで相手のメンタルにダメージを与えてでも勝とうという指導者もいるのだ。「行き過ぎた勝利至上主義」が、心ない罵声怒声の温床になっている。反対に言えば、指導者もそこまで追い込まれてしまうのだ。

今、低年齢層を中心に「野球離れ」が止まらない。その背景には「他のスポーツの選択肢が増えたこと」が大きいが、同時に野球の「ガラの悪さ」「マナーの悪さ」の問題もあるのではないか。父親が野球をやっていた家庭でも「野球は品がないから」と母親が反対して子どもどもに野球をさせない家庭があるのだ。

東京オリンピック開催が決まって以降、日本のスポーツ界も「スポーツマンシップ」を学ぼうという機運が高まっている。

スポーツマンには本来「良き仲間」という意味がある。そしてスポーツは、プレーヤー(相手、仲間)、ルール、審判に対するリスペクトが大前提だ。スポーツマンシップの考え方に則れば「人を傷つけるヤジ」は絶対にありえないことがわかる。

つづく