小池圧勝、健忘症都民にツケまわる
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都知事選挙は、事前の予想通り、現職の小池都知事の圧勝に終わった。

 得票数は、小池百合子366万1371票、宇都宮健児84万4151票、山本太郎65万7277票、小野泰輔61万2530票、桜井誠17万8794票、立花孝志4万3912票であった。

 この結果をどうみるか。

 まず、地方自治体の首長は、2期目が最強で、よほどの失政がないかぎり、再選する。それに加えて新型コロナウイルスの感染という事態が起こった。「このウイルスは小池都知事を再選させるために到来した」と言ってもよいくらいの効果をもたらした。

 連日テレビにでてコロナ対策を説明し、それが最大の選挙運動になった。露出という点では、他の候補は圧倒的に不利であった。そして、「三密」を理由に、街頭演説も、公開討論も拒否したが、それは、小池都政4年間の失敗、学歴詐称問題などを記者、他候補、有権者が問いただす機会を奪ってしまった。

 当確は20時過ぎにすぐに出たが、その後の会見も、一社以外の記者は締めだし、完全な言論封鎖を行った。記者間の距離が確保できるだけの広い会場を確保すれば済むだけの話である。選挙結果が判明すれば、多くのマスコミが集まるのは当然なので、広い会場を確保するのは、有力候補の義務である。

 「新型コロナウイルスの感染拡大防止」が理由なら、誰も反対できないし、コロナ感染者はまた増えている。「新たな日常」が記者の締め出し、言論統制というのでは話にならない。

 次に指摘すべきは、他候補の非力さである。

 全候補者数が22というのは多すぎる。泡沫候補が多ければ多いほど、現職や有力候補が有利になる。自民党が独自の候補を擁立できなかったのは問題である。

 小池都知事は二階幹事長の許に通って支持を取り付けた。都議会自民党も、前回の都議選で苦杯を飲まされておきながら、党本部に反抗もできず、彼女の学歴詐称問題追及も腰砕けに終わっている。これで、来年の都議会選挙を戦い、前回落選した議員たちを復帰させることができるのだろうか。

 そして、野党が候補者の一本化に失敗したことも小池都知事に圧勝を許してしまった。具体的には、山本太郎・れいわ新撰組代表の立候補を阻止できなかったことである。このことは、今後の国政における野党共闘のあり方にも大きな影響をもたらすであろう。

 野党がこのことを反省し、態勢の立て直しができないうちに安倍首相が解散総選挙に打って出るという可能性が強まったと言ってもよい。

 熊本県副知事から都知事の座を狙った小野候補は、維新の支援を受けたが、小池を支持したくない保守層の票を集めて、60万票を超える得票をしている。小野立候補、維新支持の裏には、自民党と維新との間で何らかの密約があるのかもしれない。

 コロナの陰に隠れて、小池都政4年間の実績の検証が行われなかったことは看過できない問題である。

 有権者の健忘症は凄まじく、豊洲騒動などすっかり忘れてしっまている。五輪施設の移転問題も、組織委員会の森会長と都知事の私とで全国を隈無く調査し、IOCのお墨付きまで出ていたのを強引にひっくり返そうとして失敗している。

 マラソンと競歩の札幌移転の決定も、主催都市のトップが蚊帳の外に置かれてしまった。

 東京五輪も今や中止かどうかの議論が中心になり、小池都政の失策を思い出す人はいない。テレビのワイドショーが措定する低劣な大衆が政治を動かす状況は、とくにこの日本において酷い。専門家ではなく、その大衆を代表するタレントたちが世論を作っている。

 ヒトラーは、「知能指数の最も低い聴衆のレベルに演説の水準を合わせろ」と喝破した。パフォーマンスと空虚な横文字スローガンこそ、ヒトラーばりの小池都知事の得意技である。無知な大衆こそ、内容も分からないのに横文字をありがたがるからである。

 都知事選圧勝の勢いに自信を持った小池都知事が、また国政への色気を見せるかどうか。彼女の最大の目的は、この世の出世階段を上っていくことである。

 そのためには、嘘も方便というわけである。小池候補に票を投じたのは東京都民であるが、彼らを待っている未来は明るくない。

舛添 要一 (国際政治学者)

7/11(土) 14:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/b4f0db17bf7799faf4a849874f2406f4e158c0a3