前作はキャストや設定・脚本がズバッと決まっていた
大前春子という人物は突飛な設定だったが、森美雪という未熟なもう一人の派遣社員を狂言回しとしてダブらせることで春子をスーパーヒロインとして対照的に描くことに成功している

能力はないが人柄がよく優しい上司の里中、仲間がリストラされ会社で派遣が重用される現状に納得がいかない派遣の敵東海林、彼らの同期では紅一点の黒岩等、人物配置が的確でドラマの中で効果的に機能していた
定年後も会社に残っている嘱託の小笠原等、会社組織を色んな角度から捉えることで物語に厚みが増していた
唯一派遣側の人間である一ツ木も安田顕が好演して存在感があった
縁の下の力持ちとして派遣を支える苦労が演技から滲み出ていた
漫画のようなコミカルドラマと捉えられがちだがドラマとしてのディティールが実はしっかりしていたのだ

続編ではまず塚地が問題外だし、前作の森美雪に該当する存在は二人に増えたが却って輪郭がボヤケてしまって今ひとつ感情移入し辛くなった
小泉孝太郎からは前作のようなフレッシュさが消え、頼みの綱の大泉洋も特別出演扱いでドラマには深く関わってこない
ヘラヘラしているだけの上地には安田顕の役割は到底無理だしドラマに重厚感を与えていた松方弘樹はもういない
新社長の伊東四朗もどうせいずれは大前春子を評価して手のひら返しするんだろうというのが配役の時点で目に見えている
ドラマで描かれる出来事も大前春子をスーパーヒロインとして描くための紋切型の予定調和に過ぎず既視感バリバリである

前作ではそれ以外のディティールもちゃんと描かれていた
だからこそ最後に大前春子がピンチを救う事で時代劇のような痛快感をもたらしていた
こういうのは本来細かいディテールの積み重ねによって成立しているものなのだ

続編ではそれらがすべて空中分解しており、著しく不適切な劣化した素材で作ったものを同じ料理ですと言われているようなものだ
まだ結婚できない男がそうであったようにハケンの品格2はもまた水戸黄門にはなれなかった
人気ドラマの安直な続編制作はもうやめたほうが良い