人はコミュニティーに何を求めるのか 元地下アイドル・姫乃たまが「居場所」をスクラップ・アンド・ビルドした理由 | 朝日新聞デジタル&M(アンド・エム)
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(※連載 20代ミュージシャンが語る“譲れない価値観”より)

6/20(土) 7:07配信

洪水のように新しい情報が溢(あふ)れ、社会が回るスピードは日に日に増している。昨日まで何ひとつ不自由のなかった場所も、いつの間にか居心地が悪くなってしまった。
目まぐるしい現代を生きていると、誰しも急に足元がおぼつかないような感覚を抱くことがあるだろう。
そうなった時、自分の居場所を捨てて、次に進むべき道を見つけることは簡単ではない。
今まで培ってきた人間関係もあるし、立場もある。仕事でもプライベートでも、続けてきたことをリセットすることには、常に不安がつきまとう。
2019年4月30日、平成の終わりとともに10年間1人で背負ってきた「地下アイドル」という肩書きを卒業した姫乃たま。傍(はた)目には順風満帆に見えていた彼女は、何を思って自分の居場所を壊したのか。彼女が過ごし、決別した10年の軌跡が私たちにヒントを与えてくれるかもしれない。

■言われるままに始めたアイドル
(略)

「集団行動がとにかく苦手で、学校生活はつらいものでした。自己肯定感が低く、スクールカーストに馴染(なじ)めなかった。学校は自分の居場所ではありませんでした」
そのためアイドル活動でも自らがプロデューサー兼、マネージャー兼、営業と全て1人でこなすことになった。自ら作り上げたファンとのコミュニティーは家族以外で初めて獲得した居場所になった。
アイドルにとっての目標は人それぞれだが、ファンを増やし、活動の規模を大きくしていくことは一般的な戦略の一つだ。そのためにはファンとの団結を強めて、CDを一枚でも多く売り、より大きい会場でライブをすることが求められる。
その傾向は2000年代半ばから顕著になり、1人のファンがCDを何十枚も買うようないわゆる「特典会商法」と呼ばれる方法で規模を大きくするアイドルが増えた。
過剰な人気集めには違和感を覚えたものの、姫乃も自分とファンとのコミュニティーを大きくするために奮闘。着実にファンの数を増やしていった。
活動の幅はライブだけでなく、トークイベントや司会、撮影モデルにまで広がり月に15本以上のイベントに出演するように。また、ライターとしての仕事もこなし、連載の数は20本になった。

■「アイドルはやりきった」

アイドルとして着実にステップアップしていった姫乃だが、彼女には元々アイドルとして成功したいという思いはなかった。いつかは就職し、会社勤めをすると思っていたので大学へ進学。卒業する頃にはCDの全国リリースや、自分のアイドル生活、地下アイドルカルチャーをまとめた書籍の出版も決まった。スケジュールは埋まり、収入も安定、アイドル活動は気が付いたら8年目を迎えていた。
彼女の成長を支え続けてきたのはファンとのコミュニティーだ。だが、彼女が地下アイドルとして成功し、自分を慕ってくれる人の数、そしてコミュニティーが大きくなればなるほど、そこはいつしか姫乃1人では把握できない、何か別の生き物のように形を変えてしまっていた。
「一部のファンは“姫乃たま”のコミュニティーしか居場所がない状態でした。アイドルとファン、ファンとファンの関係性以外に他の世界と接点を持たない人たちが少なくなく、新旧のファンの間で軋轢(あつれき)が生じてしまったようです」
半ば成り行きで続けてきたアイドル活動とそのコミュニティーは、いつしか彼女の手を離れ、歪(いびつ)な形になってしまっていた。彼女を形作ってきた土台が揺らいだようだった。

(略)

■緩やかに循環するコミュニティー
(略)
今の姫乃にとって一番大事な価値は「風通しの良さ」だという。自分にとって居心地がいい居場所を作り、誰でも出入りできるように間口を広くしておくこと。ファンを囲い込んだりするのではなく、誰でもふらっと入れて、合わない人はすぐ出ていける。姫乃自身も含めて誰もが複数のコミュニティーを行き来できる。そういった風通しの良さが、今のコミュニティーにはあるそうだ。
「ただ、完全にオープンにしてしまうと、コミュニティーとしての価値がなくなってしまいます。敷居は低いけど、適度に閉じている。半分が常連で、半分が新規のお客さん、それでみんなが楽しく飲んでいる居酒屋みたいになれればいいなと思っています。緩やかに循環するイメージですね」
(略)

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