https://blog.oddspark.com/interview/2020/06/post-146.html (全文のリンク先)
山口:産休から約1年での復帰でしたが、その前後での違いは何か感じますか?
加瀬:ガールズケイリンに関しては肝が据わりましたね。出産の痛みに比べると他の痛みや緊張、プレッシャーなど
は何ともないなと思うようになりました。他のガールズ選手など、レース前になると「緊張しているな」というのはわかるんですが、私はそれがなくなりました。
山口:以前は「人気に応えなければ」や「勝たなければ」などプレッシャーは感じていたんですか。
加瀬:ありましたね。競輪学校(現・養成所)の時は、レース前に他の子同様に私も何度も何度もトイレに行っていたんです。そういうのがなくなりました。
山口:緊張がなくなるくらいの経験が、出産なんですね。
加瀬:出産が本当に痛すぎて、他のことがどうでも良くなるなと。やっぱりそれまでは人並みにオッズでプレッシャーを感じたり、お客さ
んの声、特に厳しい声には過剰に反応したりしましたが、それも過剰には気にならなくなりました。
前は「勝たなければいけない、勝つためにはどうしたら良いか」そういうことばかりを常に考えていたので、今はそれを考える余裕もなく
育児をしなければならないですし、家族のこともあります。
だから逆にレースを走るのが純粋に楽しいです!仕事として楽しんでできていますね。
山口:そうですか!そんな変化もあるんですね。
加瀬:独身だった時は100%ガールズケイリンに集中していたんです。レース、トレーニング、体のケア、その他、すべて全力で取り組ん
で常に「勝つためにどうしたらいいか」を考えていました。そんなに集中していたので、負けた時は「あとは何を強化したら良いんだろう、何
が足りないんだろう。サプリとかプロテインとかもっと良いものがあるんだろうか」と突き詰め過ぎていたように思えます。
今は育児をしているので、体のケアを全くせずにレースに行くこともあり、旦那や母が娘を面倒みられない時、保育園を休まないといけな
い時は練習もできない。練習量は実際に半減していますからね。「こんな状態ではトップ選手たちに勝てる訳がないだろうな」と思って走っています。
山口:では楽しめて走れているのが、優勝などにも繋がっているんでしょうか。
加瀬:いや、そうではないです。練習量が減っても優勝が出来た開催は、全部【裏開催】(インタビュアー注:ビッグレースの付近で開催されるレース
のこと。ビッグレース参加メンバーは走らない)なんです。開催に行った先でオッズパーク杯ガールズグランプリやグランプリトライアルレース、ガー
ルズケイリンコレクションなどを宿舎のテレビで見ていました。
強い選手たちがいないから私が優勝できたんでしょうね。だからガールズケイリンフェスティバルへ選出されたのも「裏開催を優勝したから出られた人」です。
山口:優勝なのはどの開催も変わらないと思いますが・・・。ご自身ではそう思っているんですね。では次のガールズケイリンフェスティバルが勝負なんですか?
加瀬:そうでもないですね。ビッグレースだから育児の時間を削って練習する!という訳にはいかないですし、トレーニング量を増やしたり、ケアをしっかり
するために栄養を取って休養、などもできないです。
今まで通りの状態で入りますから、もし優勝できたらラッキーと思っています。もちろん全力で走るのは変わりません。
山口:復帰後に初めて優勝した2019年11月の向日町は、決勝逃げ切りでしたけど、そこはどう感じたんですか?
加瀬:正直に言うと、自分のレースが終わったら真っ先に帰りたかったです。今は無観客なので表彰式などもありませんが、11月は男子の最
終レースが終わった後にバンク内で表彰式がありました。それを待っている時間すらももどかしく、すぐに帰って娘の顔を見たかったです。
優勝の嬉しさよりもそちらが先に思い浮かびました。
0歳児を実家にあずけてレースに参加している身としては、いくら実母が面倒を見てくれていると言っても心配が大きかったです。
産休、育休が合わせて1年程だったんですが、そんなに早く復帰できたのも、家族と「レースが終わったらすぐに帰宅する」という約束をしたからなんです。
なので、前検日当日に行くと間に合わず前の日の夜に宿泊しての参加、最終の飛行機や新幹線では帰宅ができないようなミッドナイトの開催などは欠場を出していました。