■矢口真里さんのケース
2013年に衝撃的な「クローゼット不倫」が明らかになったことで、矢口さんは日本中からバッシングを受けたが、
公の場に出ることはまったくなく、そのまま無期限の芸能活動休止に突入した。
「会見しろ」「なぜ説明しない」と、全方向から叩かれた矢口さんが公の場で「すべて私が悪い」と謝罪をしたのは、騒動から1年5カ月を経てからだ。

その後、日清カップヌードルのCMに新垣隆さんらとともに起用されるも、
「危機管理の権威 心理学部 矢口真里 准教授」という自虐ネタに批判が殺到し、CMは1週間で放送中止に追い込まれた。

「ほら見ろ、会見をしないからだ!」と勝ち誇る人もいるかもしれないが、では矢口さんが速やかに謝罪会見を開いていたところで、
事態が好転していたかというとビミョーだ。クローゼット不倫をすべて赤裸々に語っても、
ダーティイメージに拍車がかかって、マスコミとSNSのリンチが激しくなるだけだ。
かといって、そこで下手に言い繕っても、その嘘がバレたらもっと被害は深刻だ。場合によっては、活動自粛が長引いたかもしれない。
なぜそんなことがいえるのかというと、ベッキーさんの例もあるからだ。

■ベッキーさんのケース
ご存じのようにベッキーさんは、「文春砲」で「ゲス不倫」がスッパ抜かれる前は、元気印の優等生キャラで売っていた。
そのため、突然の不倫スキャンダルに対しても、清楚なブラウス姿でしおらしく頭を下げた。

が、その会見が「質問禁止」で一方的な主張をするだけの場だったというヒンシュクものの対応に加えて、
「文春砲」によって「友達で押し通す予定(笑)」というLINEが晒され、裏の顔が暴かれてしまったのだ。
当時、筆者も幾度となく指摘したが、あのような嘘だらけの会見だったら「やらない方がマシ」なのだ。

 その後、ベッキーさんに対してどのようなバッシングがあったかは、説明の必要もないだろう。
パートナーを裏切っていた矢口さんと違って、「不倫相手」側ということもあってか、
ベッキーさんは105日と矢口さんよりも早く芸能界に復帰した。
しかし、今でもなお一定の人々はベッキーさんがCMやテレビに出演すると、「不快」「消えてほしい」などと執拗に叩いている。

会見しないで逃げ続けたと叩かれた矢口さんも、会見を開いたものの苦しい言い逃れをして炎上したベッキーさんも、
似たり寄ったりというか、傷の深さにはそれほど大差がないのである。

そして、実はこの手は芸能人だけではなく、一部の企業や団体もまれに使うことがある。
上場企業などは、株式の問題があるので、説明責任を果たさないということはあり得ないが、
政治家や役所、そして教育機関などでは「渡部スタイル」はわりと多い。
その代表が、日本大学だ。

■アメフト部悪質タックル事件 日本大学・田中理事長
 アメフト部の「悪質タックル事件」をきっかけに、さまざまなスキャンダルが発覚。
その中でも、暴力団との繋がりがあると報じられた田中英壽理事長に対して、マスコミは連日のように追いかけ回し、
「説明責任を果たせ」と迫った。日大教職員組合も、田中理事長の辞任を要求する声明を出した。

 しかし、田中理事長はホームページに、騒動を起こしたことを詫びる声明を出しただけで、一切会見を開かなかった。
 専門家たちは、「危機管理の悪い見本だ」と叩いた。日大のブランドイメージを大きく損ねる悪手だ、と。
実際、私学助成金もカットされ、このスキャンダル後の日大志願者は大きく減少した。

「そら見たことか」と専門家たちは胸を張ったが、翌年になると志願者数はすぐに持ち直し、騒動前の水準に戻っている。
そして、田中理事長は「あの騒動はなんだったのか」というくらい平穏な日々を送っている。

>>2に続く