2020.5.21 05:00
【甘口辛口】
「米騒動」が球児の夏奪ってから102年…コロナ禍による甲子園中止は100年後どうとらえられるか


 ■5月21日 「米騒動」が球児の夏を奪ったのは1918(大正7)年のことだ。米価高騰の窮状を訴える富山県魚津の漁師の妻たちが港に集まり、米の積み込みに抗議したのが始まりで、騒動はたちまち全国に飛び火して死者も出た。シベリア出兵に備え、軍隊の食糧確保のため政府が米を買い占めたことが高騰の背景にあったという。

 甲子園大会の前身、全国中等野球(当時は鳴尾球場)も米騒動に巻き込まれた。周辺の治安の悪化で開幕当日の8月14日に延期が決まり、16日朝に中止が発表された。抽選まで済ませていた全国の代表14校の落胆はいかばかりか。いまではまず考えられない中止理由だった。

 この米騒動も地域差があり、米どころの岩手、秋田、青森の3県では起こらなかった。102年後…。新型コロナウイルス感染者数も地域差は顕著で、岩手は全国で唯一感染者ゼロを死守している。まだ北海道・東北から1校しか出られなかった米騒動の年、東北代表は岩手の一関中学(現一関一高)というのも何やら因縁めく。 
北海道や首都圏の緊急事態宣言はまだ続きそうだが、岩手では4月から授業が始まり、部活動も解禁されている。盛岡大付、専大北上など強豪校同士の練習試合も頻繁に行われているという。現段階ではコロナから一番遠く、甲子園へのロードマップでは一番近くにいるだけに、中止による無念さはひとしおだろう。

 教科書で目にした程度の「米騒動」での中止を現代人が「なぜ?」と思うように、「新型コロナウイルス感染拡大による中止」は100年後どうとらえられるか。「そんなことで中止?」と訝しむほど医学が進歩していれば、今回のコロナ禍も浮かばれるというものだ。(今村忠)


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