桂文楽師匠をムッとさせた人生最大の選択――林家木久扇の直感力 から続く

人に過去あり。親しい人には何をどこまで正直に伝えたらいいのだろう。『笑点』でお馴染みの林家木久扇師匠が初の生き方指南本『 イライラしたら豆を買いなさい 人生のトリセツ88のことば 』(文春新書)を上梓。本書から、目から鱗のアドバイスをご紹介します。

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過去よりもいま――細胞なんて毎日生まれ替わる
 女の人の人生ってのはね、男と違って、秘密を隠しておくのが上手いところがあるんですね。男のようにべらべらしゃべらずに、秘め事を胸に何10年も過ごすことも出来る。だけど、それを重荷に感じる人もいましてね。

 ある女性が、結婚前にいわゆる「風俗」で働いていて、それを旦那は知らないので、気に病んでいるというのです。

 だけど、僕はそんなことは恥ずべきことではないと思うんですね。その人の気持ちとしては、旦那を騙してしまったという罪悪感があるんだろうけど、騙したんじゃなくて、その方はそういう戦術でたくましく生きてきたんだから、過去を否定する必要はないんですよ。

 そりゃ肌を見せたりオッパイさわらせたりしたのかもしれないけど、もう過ぎちゃったこと。細胞なんて毎日生まれ変わるんだから、自分を汚らわしいと思ったり、いちいち過去を恥じることはないんです。

 僕は「いやんばか〜ん」とか「酔姫エレジー」なんて歌を出した頃、レコード会社のキャンペーンで風俗店を巡業してたんですね。まあ風俗と言っても、男の人にちょっとさわらせる程度の店ですが。

 風俗って昔の本格的な遊廓から、いまのキャバクラまでピンキリだけど、エッチは商品化されるとじつはさほどエッチじゃないんですね。たとえば男がちょっと肌にさわって周りで女の子が「ソコがオチチなのォ! ワッショイワッショイ!」なんて囃し立てると、素人の男性はそれだけで盛り上がっちゃって満足したりしてね。

なんでもバカ正直にいうのが誠実ってわけじゃない
 そんなキャンペーンのひとつで高円寺のある店に行ったら、ナンバーワンはなんと60過ぎの女性だったんです。長襦袢の下は裸でパンティだけ履いて、指名があちこちからかかって店のなかを駆けずり回ってる。店内は暗闇でミラーボールが回ってるから顔がよくわからないんだけど、控室で年齢聞いてビックリしちゃったわけ。その歳でそうやって一番手で稼げるなんて立派なものですよ。全然恥ずべきことじゃない。店には短大の教授の奥さんがアルバイトでこっそり働いてたりもして、すごく意外でしたね。

 風俗って人間の一番お下劣なところを商品化したものだから、僕みたいに商売に興味がある人間からすると、とても面白い。時代によって刷新されていくし、本質的にはドライなのにエッチな幻想をつくり出しているところがすごいんですね。

 だから、風俗で働いていた過去なんて、旦那に明かす必要は一切ないですよ。いまが一番大事なんだから。

 あとね、「本当はあの人が好きだったけど、ほかの女に取られたからあなたと結婚したの」みたいな告白いりませんから。なんでもバカ正直にいうのが誠実ってわけじゃない。

 細胞なんて毎日生まれ変わるんだから、過去に執着せず、いまを大切に生きればいいんですよ。

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林家木久扇(はやしや・きくおう)

1937(昭和12)年、東京日本橋生まれ。落語家、漫画家。56年、都立中野工業高等学校卒業後、漫画家・清水崑へ弟子入り。
60年、三代目桂三木助に入門。翌年、三木助没後に八代目林家正蔵門下へ移り、芸名林家木久蔵となる。69年、日本テレビ『笑点』のレギュラーメンバーとなる。
82年、横山やすしらと「全国ラーメン党」を結成。92年、落語協会理事に就任。2007年、林家木久扇・二代目木久蔵の親子ダブル襲名を行う。
10年、落語協会の理事職を退き、相談役に就任。20年、高座生活60周年を迎える。著書に『バカの天才まくら集』、
『がんに負けるな! 免疫力を上げるポジティブ生活術』(共著)など。『笑点』最年長の“天然キャラ”として、国民的に親しまれている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200520-00037808-bunshun-life
5/20(水) 12:00配信