【ダンカンの笑撃回顧録】#41

岡村に足りないのは「度量」…女性蔑視発言を生んだもの

クルクルカラ〜ン! う〜ん、鼻腔を心地よくくすぐるコパトーンの甘い香りに、金髪美女の水着姿がホラ、あそこにもホラ、そちらにも……そうだ! まさにここは南の楽園、芸能人のステータス、ハワイなのだ。

時代でいえば……え〜っと80年代の真ん中あたりであろうか?

時代や、細かなそこに至るまでの状況はまったくといっていいほど覚えていないが、ある一つのことだけは還暦を過ぎた今でもつい昨日のことのように鮮明に記憶しているのだ。

そして、それを俺は生涯、この命が尽きるまで決して忘れないだろう……それほどの「理不尽な苦痛」を、あのワシや! 横山や!! の横山やすし師匠(1996年1月21日没、享年51)から受けたのである。

いや芸能界、それもお笑い(しかも古き時代)をそれなりに長く生きてきたのだから、先輩の中に例えばバブル時代に、タクシーが乗車拒否ばかりで止まらない旨を伝えた瞬間に

「車の前に飛び込んだら止まるやろー!!」と背中を激しく押されたり、酔っぱらって頭からオ〇ッコをまるで滝行のように浴びせられたりとあったが、

それらはどれもこれも理不尽の中のギャグ(かなりきついけど)という根っこをどこかに感じられるものばかりであったから、

心の中のどこかでやられる俺も笑えたし、許せないことなど皆無であったのだ!!

しかし、やすし師匠のあれだけはギャグでもなければ……そこには怒りしか存在していなかったのだ。話の筋は単純そのもので、

ハワイの夕暮れ時のレストランで、たまたまやすし師匠ご一行がディナーのテーブルを囲んでいるのを目にした我々たけし軍団であった。

業界の大先輩を見かけて挨拶もしなかったなんて噂にでもなれば殿(ビートたけし)の顔に泥を塗ることになるので、当然「お食事中、申し訳ありませんが、たけし軍団です!」とみんなで頭を下げたのです。

それに対し、やすし師匠は「おうおう! 兄ちゃんら頑張っとるなァ! 見とるでェ!!」とアルコールも入って上機嫌に会話してくれたのだ。

「兄ちゃん、何ちゅう名や?」「そのまんま東です!」「そのまんまがええなあ!で、兄ちゃんは?」「ハイ、ガダルカナル・タカと言います!」「そうや! インパクトある名やがな!!」

そんな穏やかな空気が軍団各自の名を告げて、最後に俺が当時ダンカンから変わっていた名前を……「ふんころがしと申します!」と言った途端、みるみるうちに師匠の顔が険しくなり、顔色も変わり、

「なめとんのかー!! 何や名前?」「ふんころがしです」「しばいたろーか!! 何やて名?」「いや、ふんころがしなんです!」「芸能界におられんようにしたるわー!!」。

その後、他の軍団はすぐに解放されたが、俺は結局、食事が終わるまで2時間近く直立不動でありとあらゆる罵倒の言葉のヤリでメッタ刺しにされたのだった……。

(なぜ怒ったのか意味不明?)だから、俺は生涯忘れない……でも、それも今となってはいい思い出(?)、やすし師匠許しちゃいますよ〜!!(笑い)=つづく

(ダンカン/お笑いタレント・俳優・放送作家・脚本家)

https://news.livedoor.com/article/detail/18272423/
2020年5月17日 9時26分 日刊ゲンダイDIGITAL