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再開が全く見えないJリーグで、今後の“コロナ不況”に戦々恐々としているクラブがある。J1ベガルタ仙台だ。

 1月に発表した2019年度の決算見通しでは2億7100万円の赤字としていたが、今月3日のクラブ取締役会では1億5600万円拡大して4億2700万円の赤字に。今後起こりえるコロナ不況に向け、固定資産の減益処理を前倒しにした結果だが、前期比よりなんと5倍も増えた。

 Jリーグでは3期連続赤字でライセンス剥奪。2期連続の最終赤字になった上、金額は過去最悪でまさに非常事態だ。菊池秀逸社長は「大幅な赤字。株主、スポンサー、県民、市民のみなさまにおわび申し上げたい」と陳謝した。

 Jクラブの社長が県民、市民に謝る。プロ野球ならばあり得ない光景だが、仙台は宮城県と仙台市の支援がなければとっくにつぶれていた。

 発足は1994年。折からのJリーグバブルに乗って『仙台にJクラブを』というムーブメントが起きた。集まった署名は33万人以上。当時の宮城県知事選で当選者が得票した29万票より多かった。運営会社の資本金3億円を宮城県、仙台市、地元企業がそれぞれ1億円を出資して、前身のブランメル仙台を設立。しかし、96年には9億4900万円の巨額赤字を計上してしまった。

 その赤字も宮城県と仙台市が株主になる形でなんとか存続。2009年からは仙台市所有のホームスタジアム「ユアテック仙台」の命名権料のうち2500万円を得るとともに、仙台市からスタジアム使用料2500万円が減免され、5000万円以上の実質支援を受け続けている。05年から同じ仙台市内に本拠球場を置くプロ野球・楽天が、自立した経営を行っているのとは対照的だ。

 J1仙台の赤字のおもな要因は「むだな大型補強とサッカーの素人がフロントに多いこと」と断罪する関係者も多い。仙台の成績不振で客足が遠のいた上、コロナ禍で今季の開幕延期が追い打ちとなり、先月31日にはスタジアム内売店の経営会社が約1億円の負債を抱え破産申請。宮城県初のコロナ倒産となった。

 菊池社長が「Jリーグの再開が延びればさらに経営は厳しくなる」と頭を抱える中、5月上旬予定だった再開の白紙撤回が8日に正式決定。傷だらけの仙台をJリーグは決して見捨てない覚悟だが、このままコロナの猛威が続けば特定のクラブに肩入れする余裕もなくなる。(夕刊フジ編集委員・久保武司)