新型コロナウイルスの感染拡大はいっこうに止む気配はない。イタリアを始めスペイン、フランス、ドイツなどは日本を上回る感染者が続出し、WHO(世界保健機関)は「パンデミックの中心はヨーロッパに移った」と警戒感を強めている。

ギリシャは東京五輪のための国内の聖火リレーを中止し、アメリカのトランプ大統領は私見と断りながらも東京五輪について「観客がいない状態で競技を行うよりは、1年延長する方が良い代替案だと思う」と開催延期を示唆した。

すでにJリーグは3月開催を延期し、J1参入プレーオフもなくなる可能性がある。さらに天皇杯も方式を変更することを14日の理事会で決定(32強が揃うJ1は4回戦から、J2の上位チームは3回戦から出場)した。

新型コロナウイルス発症の地であるアジアのW杯予選も延期され、それはヨーロッパや南米にも波及した。そして6月に開催予定のEURO(ヨーロッパ選手権)も中止になる可能性が高い。

皮肉にも今大会から参加チームの24カ国は変わらないものの、大会方式を変更。1カ国あるいは2カ国の共同開催からヨーロッパ12カ国の分散開催に変更したことで、大陸間のファン・サポーターの移動により新型コロナウイルスの感染拡大の危険があるからだ。

もしもEUROが中止になれば、それは7月22日から開幕する東京五輪にも影響を及ぼす可能性が高い。トランプ大統領は1年後の延期を提案したが、来年はアメリカで世界陸上(8月6日〜15日)があるため、五輪に高額の放映権料を払っているアメリカのテレビ局は国際大会が重複することに反発する可能性が高い。さりとて2年後はカタールでW杯が開催される。

唯一の救いは、カタールW杯が初夏ではなく年末(11月21日〜12月18日)に開催されることだろう。これなら2年後に先送りできるものの、それを東京都が受け入れるかどうか。さらには、その次の五輪を「いつ」開催するかが問題になる。そうした諸条件を勘案すると、残念ながら今夏の東京五輪は中止という選択肢も考えなければならなのではないだろうか。

当初は東京五輪の開催に前向きだったIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長も、「WHOの判断に委ねる」と発言するなど、その姿勢に変化が見られる。そこで過去に五輪が中止されたことを調べてみた。

1896年にギリシャのアテネで第1回大会が開催されて以来、124年の歴史上、夏期五輪が中止されたことは3回ある。そのいずれもが戦争で、1916年、1940年、1944年の3大会が中止になった。

史上初めて中止になった五輪は16年のベルリン五輪だった。それというのも14年に第1次世界大戦が始まり、戦争がいつ終わるのか分からなかったため大会は延期されたのだった(第1次世界大戦終了後の36年にベルリン五輪が開催され、「ヒットラーの五輪」とも言われた。日本サッカーは初めての参加で、トーナメント初戦で優勝候補のスウェーデンに3−2の勝利を収め、「ベルリンの奇跡」と言われた。しかし続く準々決勝では優勝したイタリアに0−8と大敗)。

2度目の大会中止は40年の東京五輪だった。柔道の講道館の創始者であり、日本におけるスポーツの開拓者(東洋における初のIOC委員)でもあった嘉納治五郎が招致に尽力したことは、昨年NHKの大河ドラマ「いだてん」でも紹介されたので記憶に新しいのではないだろうか。

日本での開催が決まったものの、その後37年に「盧溝橋事件」が発生し、日中戦争につながったため、日本は開催権を返上せざるを得なかった。その後、東京の代わりにフィンランドのヘルシンキが五輪を開催することになったが、39年に第2次世界大戦が始まったため開催はできなかった。

さらに1944年のロンドン五輪も第2次世界大戦で中止になった。その代わりにロンドンは終戦直後の48年に五輪を開催。そして4年後の52年はヘルシンキ、東京は64年に五輪を開催している(56年はメルボルン、60年はローマ)。

過去3回の五輪は戦争により中止となった。もしも今夏の東京五輪が疫病により中止となったら初のケースとなる。いまだ終息の見えない新型コロナウイルスだけに、世界的な規模で対応せざるを得ないだろう。経済的な打撃も日々、深刻度を増している。東京五輪の開催の是非も、今後はシビアに、より現実に即して議論されるべきではないだろうか。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200316-00371810-usoccer-socc
3/16(月) 20:00配信