久保建英がバルサを選ばなかった理由。世界一の育成組織がグラグラだ

 有望な若手に25万ユーロ以上は払わない一方で、トップチームは湯水のように大金を使い、
戦力にならない選手を増やしている。定位置も取れないトーマス・ヴェルメーレン、ネウソン・セメド、
アンドレ・ゴメスなどに30億円も40億円も移籍金を投じ、3〜5億円の年俸を支払っているのだ。

「ラ・マシアこそバルサ」

“バルサの創造主”ヨハン・クライフが作った土台は揺らぎつつある。

 変化のきっかけとしては、2014年のFIFAによる「18才未満選手の契約禁止ルール」が
厳しく実行されたことがあるだろう。久保自身、この決定によって帰国せざるを得なくなった。
世界中から精鋭を集めて育成するという強化の方針にひびが入り、EU内のみに人材を求めることになった。

 2017−18シーズン、バルサBが2部から2部B(実質3部)に降格したことも、変化のひとつの理由だ。

「ユース年代でなくとも選手を他のクラブから補強し、2部昇格を支援させつつ、
可能ならその選手もトップに引き上げる」

 クラブはバルサBに、他のクラブから選手を引き入れることになった。
丹念に育成された選手たちがバルサの伝統を支えていたのに、そこに
他のクラブの有力選手が加わり、どこにでもあるトップチームの予備軍に成り下がった。

“助っ人”はバルサで育ったわけではなく、当然ながら調和は難しい。
同シーズンに入団したブラジル人のビッチ―ニョ、ホンジュラス人のアントニー・ロサーノ、
アルゼンチン出身のスペイン人マティアス・ナウエルはいずれもすでに退団し、昇格にも失敗している。

 2018−19シーズンも、バルサBは同じやり方で臨んだ。セネガル代表のムサ・ワゲなどを補強したが、
やはり昇格できていない。

ラ・マシアの頂点であるバルサBは深刻な低迷期を迎えている。
チーム成績だけでなく、トップに定着できる人材を生み出せていないのだ。

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