この川崎で起きている卑劣なヘイトクライムに対し、正面から抗議の声を上げているのが、モデルで女優の水原希子だ。水原といえば、在日韓国人の母親とアメリカ人の父親の間に生まれた出自をめぐって何度もヘイト攻撃を受けながらも、まったく怯まずに反差別を訴えてきた。その水原が1月21日、Twitterで「『在日コリアン虐殺宣言年賀状』に対して、国と市に緊急対策を求めます!」という
ウェブ署名キャンペーンを貼り、賛同を呼びかけたのだ。

〈悪質な人種差別、在日コリアンに対してのヘイトに心が痛みます。
どこに生まれても私達はみんな同じ地球人
以下のキャンペーンに賛同をお願いします!「内閣総理大臣と川崎市長: 「在日コリアン虐殺宣言年賀状」に対して、国と市に緊急対策を求めます!」〉

 この署名の呼びかけは多くの好意的な反響を呼んだが、一方で、水原を非難し差別を正当化するリプライも送られた。

〈反日教育で日本人が貶められていることにも関心を持っていただきたいです〉
〈こういう活動をする前に、何故特定の民族だけ嫌われるのか考えて欲しい〉
〈人種差別の前に『韓国の歴史捏造』を勉強しなさい!〉
〈韓国人からの日本人へのヘイトはどう考える?〉
〈先に色々とやってきたのはあちら側ですよ。散々やっておいて、やられたら、暴力だ!は違いますよ。〉
〈それなら日本人へのヘイトスピーチも何とかしてれませんかねぇ。どちらかと言えば在日コリアンに対するヘイトスピーチってやり返してる感のが大きいと思いますよ。〉

 いちいち反論するのもウンザリするほど差別やヘイトスピーチに関する認識も歴史認識も間違いだらけのものばかりだが、しかし、水原が素晴らしいのは、こうしたネトウヨ的な常套句を無視せず、正面から受け止めてアンサーしたことだ。1月27日には〈このツイートに対して様々な見解を拝見しました〉と、自分に向けられたリプライなどに目を通したことを示した上で、「私が思っている事」を文書でアップしたのである。

 水原はこの文書のなかで、キャンペーンに賛同した理由として〈在日コリアンに対する殺害予告ハガキは完全に脅迫罪であり、事件が起きる前に警察が動くべきだと思った〉〈多国籍市民が交流する場を守る必要があると思った〉と明言。〈私はこの世界に生きているどんな方でも、差別や偏見を受けたり、経験したことがあるのではないかと思います〉と綴る。さらに、人種差別だけでなく、性差別や階級差別などあらゆる差別や偏見をあげて、差別された憎しみが差別を生む〈差別の連鎖〉に対しては、「ふと差別心や偏見が湧き上がった時にこそ意識的に自覚すること」、「相手の立場に立って知ろうとすること」の大切さを訴えたうえで、こう続けた。

〈そして、大前提に誰かに嫌な事を言われたり、されたりしても、それはあくまでもその相手、個人の問題であって、それは絶対に人種やそのコミュニティー全般の問題ではない。一色単に特定の人種を否定するのは、絶対に違うし、理論的に間違っていると思います。
 大切なのは、この地球に生きている同じ人類、地球人として優しさと強さを持って今をしっかり生きていく事、そして前を向く事が大切だと思います。
 今まで約25カ国を旅して思うのは、日本に住んでいても様々な考え方がある様に、世界にも様々な考え方や思想があって、同じ国や人種、宗教に属していても、人間はみんな多種多様なんです。〉(原文ママ)

 文書を〈みんなの意識でMore love Less hateな世界にして行きましょう!〉と締め括った水原。その根底にあるのは「多様性を認めること」こそが「人類として共生すること」を可能にするという、力強いメッセージだ。

 水原がツイートのなかで〈私が言いたかったのは、みんな同じ人類として歩み寄って、許し合ったり、助け合うって事。つまりみんな同じ人類としてって意味です。国やコミュニティが違うと分断されてる様に見えているけど、そうじゃなくて同じ人間としてって意味です〉と書いているように、グローバル社会のなかで私たちは、「多様性」を認めて〈同じ人類〉という意識を持つことなしに、大きな困難を乗り越えることはできない。ネトウヨたちがヘイトを正当化するために持ち出す〈差別の連鎖〉でなく、お互いを知り、寄り添うことで生まれる〈愛の連鎖〉を水原は信じるのである。

 ネトウヨ的なリプライも唾棄せず、真摯に粘り強く語りかけるようなメッセージを出し、差別と偏見をなくすことの必要性を訴えた水原。

☆記事内容を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい
https://lite-ra.com/2020/02/post-5236.html