◆古島 弘三(ふるしま・こうぞう)1970年(昭45)生まれ、群馬県出身の49歳。弘前大医学部、同大大学院を経て、06年から慶友整形外科病院に勤務。現在は同病院の整形外科部長、慶友スポーツ医学センター長を務める。日本整形外科学会専門医、日整会認定スポーツ医、日本体育協会スポーツドクター、医学博士。学童から野球を始め、高崎高時代は野球部に所属。大学ではゴルフ部で全日本学生ゴルフ選手権大会に出場した経歴を持つ。

 ▽肘じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)損傷した肘のじん帯を切除、手首や足首などから正常な腱を移植する。肘の骨に穴を開け、新たなじん帯を通して縫合。1970年代にフランク・ジョーブ博士が考案し、ドジャースの投手だったトミー・ジョンが74年に初めて受けたことで「トミー・ジョン手術」と呼ばれる。近年の統計では24〜25歳の選手は80%超の確率で大リーグに復帰。

 《高校生の球数制限に持論》古島医師は、今年のセンバツから導入される「1週間で合計500球」の球数制限ルールに、故障防止の観点から不十分なルールと疑問を呈している。週に5試合で100球を投げられる上、練習での投球数に踏み込んでいない内容に「本気で(選手を)守ろうとしているようには見えない。それで守れる選手はいても1人か2人。決勝くらいまでいかないと、500球を投げる投手は出てこないと思います。練習を含めた規定を設けるべき」と訴えた。

 昨季限りで現役引退した楽天・館山2軍投手コーチをはじめ多くのプロの治療や手術を担当した古島医師も人数の割合では8〜9割が小、中、高校生のアマチュア選手。「半数のチームは1回戦で負けるし、レギュラー争いの練習のさなかで投げすぎてケガをしてしまう子の方が多い」と指摘、アマ球界における勝利至上主義の見直しと、指導者の意識改革を求めている。

 米国では14年に発表された青少年育成のガイドライン「ピッチ・スマート」を採用。投球数と休養日の目安が示され、1週間の合計投球数にしてみると200球前後しか投げられない。また、制限なく連投できるのは1日30球までで毎日投げても週210球にしかならない。「育成年代においては、“ケガから子供たちを守りたい”と思っている指導者もいます。ルール化することで投手交代の理由として、そのような考えの指導者を、外部の批判から守ることができる」と話した。

 《“時短”と投手育成モットー ポニーLチーム 昨春に立ち上げ》故障防止の取り組みを実践すべく古島医師が昨年春に立ち上げたのが、ポニーリーグの「館林慶友ポニー」だ。短時間練習と多くの投手育成をモットーとしており「理解のある保護者の方に来ていただいている」という。座学でトレーニングや医学について学ぶ機会も設けている。