貧しさゆえにオフは「教師」

15日、阪神は新外国人選手としてジョー・ガンケル投手(27歳)の獲得を発表した。
先日入団が決まったジャスティン・ボーア(31歳)はシーズン20本塁打以上を3度も数えるなどメジャーで実績を残した一塁手だが、ガンケルの場合はまったくない。
ない、というよりメジャーに昇格したこともない、正真正銘の「マイナーリーガー」だ。

ガンケルの来季年俸は50万ドル(約5500万円)。助っ人選手としてはかなり安い部類だが、きっと跳ねて喜ぶほど嬉しかったのではないか。
ガンケルは過去4シーズンを3Aで過ごしてきたが、“野球”での収入は1万5000ドル(約162万円)程度で、これが「レギュラーシーズンのみ」支給されてきた。

マイナーの過酷な環境ついては知っている方も多いだろう。給料が安いだけでなく、長時間バスに揺られながらの遠征、ハンバーガーを中心とした食事、バットやグラブも基本的には自腹、
長時間の試合になっても残業代はなし、オフの給与はゼロ……というブラック企業真っ青なもの。
つまるところ、大半のマイナーリーガーはオフは完全に“無職”となり、職探しに奔走することになる(最近はウーバーで働くのが“ブーム”らしい)。
当然、ガンケルも例外ではなく、オフは別の仕事をしていた――教師である。

大学3年次にプロ入りしたため、大卒資格に1年足りず職探しに苦労しながらも、ミドルスクールの教師をしているメーガン夫人のおかげで、2017年のオフに代理教師の働き口が見つかった。
週に3〜5日、日給は100ドルに満たない。しかし、生活のためには仕方がない。さまざまなクラスを受け持ち、体育の授業が得意だったが、自らプロ野球選手とは明かさなかったという。

マイナーリーガーは“バイト”で生計を立てるのが普通に…

もちろん、ガンケル自身は教師がしたかったわけではないが、先に挙げたように給与の低さから二足の草鞋を履くしかなかった。
今回、ともに来日したメーガン夫人の言葉が、ガンケルを、そしてすべてのマイナーリーガーの状況を代弁している。

「彼はフレキシブルに働けるパートタイムの仕事を探していたの。だってオフも野球に打ち込みたいからね。とにかく野球に一番フォーカスしたかったはずなの。
でも……、彼はお金を稼がないといけなかったから」

現在、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは大規模なマイナー球団の削減を検討している。
これは一つに、各チームの保有球団数を減らすことで経費を浮かせ、その分を環境面の改善につなげることが名目として挙げられている。

この是非はともかく、ガンケルのようにマイナーリーガーがオフに職探しに追い込まれるのは異常でしかない。
確かに全選手の給与を引き上げれば、その分、お金がかかるのは事実だろう。
しかし、現在のメジャーリーグは1兆円ビジネスに成長しており、マイナーリーガーたちの経済基盤を支えるだけの体力はあるはずだ。

最後に『NBCスポーツ』のビル・ベア記者の言葉を紹介しよう。

「生活のために芝刈りやウーバーの運転手をする時間、練習のために充てるほうがよっぽどいい。
どうして何百万ドルも出して契約した選手たちに、その投資を回収するための環境を与えないのか」

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191216-00010003-thedigest-base
12/16(月) 7:00配信