ウィザーズの八村塁(21)は今季2度目の対戦となったクリッパーズ戦で17得点を挙げたがチームの勝利には結びつかなかった。

 しかし与えられたフリースロー(FT)は7本すべて成功。試投数も成功数もNBAでは自己最多となった。ゴンザガ大時代の昨季のFT成功率は73・9%(222本中164本)だったが、NBAでは22試合を消化してなんと88・9%(45本中40本)にまで急上昇。同じカードだった1日のクリッパーズ戦の第4Q以来、これで17本連続でFTを決め続けている。

 今ドラフトの1巡目で指名された新人で主力となっている選手では、5番目指名のダリアス・ガーランド(19=キャバリアーズ)が85・2%、13番目指名だったヒートのタイラー・ヒーロ(19=ヒート)が82・2%、28番目指名のジョーダン・プール(20=ウォリアーズ)が85・7%と80%台に乗せているが、この3人はガードの選手であり、センターまで兼ねるフォワードの八村がここまで数字を伸ばすとは誰も思わなかっただろう。

 3点シュートが多用される最近のNBAだが、一方で「入れて当たり前」のFTで苦しんでいるルーキーも多い。ドラフト全体3番目指名のフォワード、R・J・バレット(19=ニックス)は平均14・3得点を挙げながらもFT成功率は53・2%と低迷している。デューク大時代の昨季も66・5%と決して得意ではなかったが、より強烈なプレッシャーを受けるNBAでは体力的にも“削られる”ことが多いのは当たり前で、それが「距離4・57メートルでノーマーク」という簡単なシュートを決めきれない要因にもなっている。

 最も苦しんでいるのは昨季のNCAAトーナメトの西部地区決勝で、八村のいるゴンザガ大を75―69下してその後、ファイナル4の決勝まで勝ち進んだテキサス工科大出身のシューティング・ガード、ジャレット・カルバー(20)だ。ドラフト全体6番目にティンバーウルブスに指名され、今季は21試合(先発11試合)で9・2得点を記録しているが、昨季70・7%だったFT成功率は2本に1本さえも入らない43・5%にまでダウンしている。NBAのプレッシャーが、FT時に「イップス病」に似た症状をもたらしているようにも見え、彼は今、ラインに1人で立たされたときにもがき苦しんでいる。

 その中でデビューから22試合すべてに先発している八村は、何度も相手にダンクをブロックされながらも精神的にも肉体的にも持ちこたえ、FTという地味ながら大切な部門での成績はしっかりと伸ばしてきている。

 クリッパーズ戦の前まで八村の1試合のFT平均試投数は1・8回(成功1・6回)だったが、この日は一気にその数がアップ。おそらくかなりの手応えを感じているはずで、平均で14・6回もFTを放っているロケッツのジェームズ・ハーデン(30)に見習って?相手の反則を誘うスキルを身につけることが次のステップになるだろう。

 クリッパーズ戦を終えた直後の八村のFT成功率はリーグ全体の17位相当。敗れたとはいえ、ドラフト指名組のルーキーとしては“首席”で、これからもこの部分は大切にしてほしいと思う。おそらくウィザーズ関係者さえも予想していなかった隠れた部分?での進化と進歩。チームの敗戦は増えているが“光”は確実に差し込んでいる。(高柳 昌弥)

2019年12月09日 11:11
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