厳しいサッカー環境。日本への影響も

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このような強化が実ったキルギス代表だが、その環境は決して恵まれている訳ではない。W杯予選で使用する首都ビシュケクのドレン・オムルザコフ・スタジアムは2000年に改修を施した後は手付かずで、土が見えるほど禿げてしまっている芝は緑色の塗料によって何とか体裁を整えた。荒れたピッチでのプレーはケガも増加するが、クレスティニン監督は「我われのチームドクターは何が禁止薬物かさえ知らなかった。この国のスポーツ医療は破滅的な状況だ」と改善を訴えている。8チームのみで行われている国内リーグのレベルは低く、主力に故障者が出ると代わりの選手が見当たらない。選手層の薄さに加えて、故障の予防やリハビリに対する医療体制が不十分なため、代表は常にケガ人に悩まされベストメンバーを組むことができない状態だ。今回の日本戦でもFWリュクスが直前に肩を痛め欠場となる見込みで、前線は10番のミルラン・ムルザエフに頼るしかなく、中盤のベルンハルトや期待の20歳アリマルドン・シュクロフが彼をどれだけサポートできるかが数少ないチャンスをものにする鍵となりそうだ。

 国内メディアは「日本はこのグループの絶対的本命」として、中島翔哉の評価額が自国代表選手11人を合わせても10倍も上回ることを紹介。キルギスサッカー界では数カ月も無給での活動を強いられ、選手の半数がチームを去るといった事例がたびたびあり、代表チームへの金銭的な支援も乏しい。指揮官はこうした現状に対して「私は選手たちと話し合って決めたんだ。まずはピッチ上で結果を出そう。そうすれば自然とピッチ外の問題も解決する」と意気込んだ。日本はもちろん強いが、簡単に白旗を上げるつもりはない。

 W杯予選はアジアカップの予選も兼ねているため、キルギスは「最低でもアジアカップ2023出場権獲得」を目標としている。代表の活躍により国内各地では以前よりも子供たちがサッカーをする姿が目立つようになったが、グラウンドなどの環境整備はまだ課題が山積みだ。次なる進化の段階にまでたどり着いたキルギスのサッカーが、これから人々の生活に文化として根付くかどうか、その命運は代表チームの勝利に懸かっている。