東日本大震災で被災したいわき市を本拠とするアマチュアのサッカークラブ「いわきFC」が今季、トップのJ1から数えて5部に当たる東北社会人リーグ1部を無敗で勝ち抜いた。10月の台風19号でも大きな被害が出た同市。被災者の期待や思いを背負うチームは、日本フットボールリーグ(JFL)昇格を懸け、8日開幕の全国地域チャンピオンズリーグ(CL)に挑む。

 台風では市内を流れる夏井川が氾濫し、浸水被害が相次いだ。大会を控えた貴重な調整期間だったが、選手やスタッフは被災住宅の片付けや、避難所での物資配布といったボランティア活動に汗を流した。田村雄三監督は「自分たちがやれることをしなければいけないと思った。大会を通じて、市民に元気や勇気を届けたい」と意気込む。

 チームの成長を支えるのは、平成28年のシーズンから運営に携わる人気スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店「ドーム」の豊富な支援だ。選手は同社の物流センターで働きながら、敷地内の専用グラウンドで練習。充実した機器がそろうジムでは筋トレに励む。

 チームの特徴は、最後まで走り切り、肉弾戦にも屈しない戦いぶり。かつて炭鉱で栄え、剛毅さを尊ぶいわきの気風にも合致し「復興の象徴」として認知度が向上した。目標はJリーグ入りだ。

 CLには、9地域から強豪全12チームが出場。2位までに入れば昇格できる。決勝ラウンドの会場がJヴィレッジ(楢葉町、広野町)で「地の利」が見込めるのは好材料だ。いわき市の自営業、野田昇さん(57)は「チームの夢とともに、被災地も盛り上がっていきたい」と望みを託す。

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