2019年11月6日 23時02分
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 オウム真理教を題材にした『A』やその続編『A2』、ゴーストライター騒動の渦中にあった佐村河内守を題材にした『FAKE』などで知られる森達也監督の新作『i−新聞記者ドキュメント−』(11月15日公開)のパネルディスカッションが6日、明治大学駿河台キャンパスで開催。森監督と、本作に出演する東京新聞社会部記者の望月衣塑子(もちづき・いそこ)が登壇した。

 本作は、今年6月に公開された映画『新聞記者』の原案となった著書を執筆したことでも知られる望月衣塑子記者の姿を通し、日本の報道の問題点、ジャーナリズムの地盤沈下、日本社会が抱える同調圧力や忖度の正体に迫るドキュメンタリー。会場には明治大学の学生たちが多く集まり、Q&Aの際には学生から望月記者や森監督に対し、現代の日本メディアが抱える問題点に対しさまざまな質問が飛んだ。

 ある学生が望月に「SNSを通じて政治について発信することで、バッシングされるのではないかと恐怖がある。(政治的発信をしてバッシングされることへの)恐怖の乗り越え方は?」と質問すると、望月は「わたしが会見などに乗り込んでいくようになったのは今の政権や官邸に対して怒りが先走っていたから。その後、どんなバッシングが来るかは想像していなかった」と自身の体験を振り返りながら回答。

 望月記者は世に名前が出るようになってから、とりわけネットで叩かれるようになったといい「『トンでも質問だ。あいつは外国のスパイだ』って言われたりしたんです。(そういうことになると)政治批判などはできないなと萎縮する人もいると思うんですけど、ネット空間のバッシングはわたしの感覚では恐れるにたらずと思っています」と自身の考えを述べる。

 そんな望月に対し、実生活で危険な目にあうのではと心配する声もあったというが「わたし自身は活動して来て、ネット上で批判している人から襲われたなんて経験はまずゼロ」ときっぱり。それでも「一回だけ、大学で講演をした時に若者がバババって入って来て、こっちに来るかなってことがあったけど、叫んで去っていくだけだった」といった出来事も。そういった体験を踏まえ、「ネットの空間だけのことに囚われないで。何かアクションをしたいと思った時は、勇気を出していろんなことを発信していってほしい」と呼びかけた。

 また、望月は自身が出演する『i−新聞記者ドキュメント−』の話題に及ぶと、「まさかこんなところまで使われないよなってところまで撮られていてすごく恥ずかしかったけど、わたしの良い面も悪い面もきちんと撮ってもらっていてありがたかった」とコメント。とりわけラストに感じ入るものがあったようで、「最後の10分は森さんが過去の作品も含め、一貫して伝えたいことが強く感じられた。その人自身の持っているもの、個の大切さというのをラストの森さんのコメントと共にわたし自身も再認識させられた」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)

『i−新聞記者ドキュメント−』は11月15日より新宿ピカデリーほか全国公開