テレビ朝日系の報道番組『スーパーJチャンネル』で発覚した不適切な演出。
民放各局で「やらせ」疑惑が相次ぐ中、今回はテレ朝が自ら調査結果を公表し明らかになった形だ。

やらせ疑惑からテレビ局が抱えるさまざまな事情が垣間見えてくる。
元テレ朝のプロデューサーの鎮目博道氏がひもとく。

「記事にされる前にまず、自ら調査して会見を開き、謝った」というところに正直少し救われた。
「スーパーJチャンネル」に駆け出しの頃から、ニュースや企画のいわば責任者であるデスク時代まで11年間在籍して、育ててもらった私の正直な感想だ。

このところテレビ界で相次いだ「やらせ」問題のほとんどが「他のメディアに記事にされる」わけでなく、
放送局が直接指摘を受けて調査を開始し、記者会見を開くという経緯をたどっている。TBSの『クレイジージャーニー』もしかり。

まさに、私にはこれが「今のテレビ界」を象徴する動きに思える。

ひとつはテレビ界を取り巻く「視聴者の厳しい目」の表れだろう。
「やらせ」に対する視聴者の拒絶反応は、ある意味テレビ局の存在そのものへの不信感に根付いている感じがとてもするし、
そこに対する対応を誤れば局全体へのイメージダウンが避けられない。

なので、できるだけ早く、しかも厳正に対応するのが今の放送局のデフォルトになっている気がする。
「内容面への」対応は信用問題であり死活問題なのだという、認識が局の上層部に根付いてきたのではないか。
セクハラやパワハラについては、そうでもないかもしれないが…。

もうひとつは「現場の疲弊があまりに著しい」ことだと思う。減り続ける予算と、厳しくなり続ける現場スタッフの置かれた環境。
いつ誰が“行き詰まって”禁じ手への誘惑に駆られても不思議ではない状況に追い詰められている中、
限りなく「SOSに近い」「内部告発に近い」形で、外部から指摘が寄せられることも増えているのだと思う。

今回のケースについてはわからないので、あくまで一般論だが。

テレビは今、大きくシフトチェンジをする必要に迫られている。若い世代を中心に、業界の誰もがその認識をほぼ共有していると思う。
メディアとして、コンテンツの目指す方向を、「やらせ」をしなくても済むような「無理のない環境で作れるもの」に向けることが、
今後メディアが求められる姿にも結局は一致することになる気がしてならない。

スーパーJチャンネルは良質な番組だ。いずれ立ち直ってくれる、とOBとして信じている。
http://www.zakzak.co.jp/ent/news/191019/enn1910190012-n1.html