■中国は超新自由主義■

 ーーそういう人々がネトウヨ化しているということですか?

 内田 「ネトウヨ」という言葉はこのような事態を指すのにあまり適切だとは思いませんけれど、「ネトウヨ」たちが株式会社モデルにまったく疑問を感じていないことはたしかですし、無意識のうちに中国やロシアにあこがれを抱いていることもたしかです。

 ――中国こそ新自由主義的な国家という気がしますが。

 内田 中国は新自由主義という以上の国だと思います。14億人という人口は19世紀末の世界人口ですから。かつての全世界の人口を統制し、反対派を抑え込み、経済成長し、軍事力を増強し、学術的な発信力も高い。これはほとんど「奇跡」というのに近いんです。 

 日本の国力が急激に衰えていることに多くの人はもう気がついています。日本の没落という足元の現実と、中国の興隆という対岸の現実を見比べると、「やはり戦後民主主義体制が非効率でいけなかったのだ。日本も中国みたいな独裁国にすべきだ」と推論するのは、ある意味では合理的なんです。

▼シンガポール型統治をめざす日本は韓国が邪魔

 ――それは戦前の絶対君主的国家に帰るということですか?

 内田 絶対君主的な国家にはなりません。なりたくてもなれない。戦前なら「天壌無窮の皇運を扶翼すべし」とか「八紘一宇」とか「大東亜共栄圏」とか、国策を飾るイデオロギーがあったけれど、いまの日本が目指している独裁体制にはイデオロギーがありません。しかたがないから、74年前に敗戦で放棄したはずの大日本帝国のイデオロギーを拾い上げてきて、使い回ししている。

 でも、そういう誇大妄想的なイデオロギーがかつてはそれでも使い物になったのは、大日本帝国が主権国家であり、植民地帝国であり、世界有数の常備軍を有した大国だったからです。今の日本は、そのどれでもありません。アメリカの属国である日本に超国家主義のイデオロギーを掲げられるほどの力はありません。

 日本が国家目標として掲げることができるのは「金」だけです。だとすると、モデルとなるのはシンガポールになる。中国は大きすぎるし、あまりに複雑で精密な統治システムを持っているので、とてもじゃないけど日本の政治家や官僚には中国型システムを制度設計することができない。

 それに比べると、シンガポールは真似しやすい。一党独裁で、治安維持法があって、政治警察は令状なしで気に入らない人物を逮捕拘禁でき、反政府的なメディアは存在しないし、学生は「反政府的な思想を持っていない」ことを証明する書類を政府に発行してもらわないと大学に入れない。

 そういう国が現に経済的に成功している。シンガポールは人口500万人、千葉県くらいのサイズです。これくらいなら日本の政治家や官僚がどれほど無能でも、統治機構の真似するくらいのことはできる。そう踏んでいるんだと思います。

 でも、中国モデル以外のモデルが実は身近に存在しているのです。韓国がそうです。韓国は長く軍事独裁で苦しんできましたけれど、1987年の民主化以来、市民たちが自力で民主制を整備し、あわせて経済成長を遂げ、文化的な発信力を急激に上げて来た。一人当たりGDPで韓国は日本がいま世界26位、韓国は31位ですが、日本は2000年の世界2位からの不可逆的な転落過程であり、韓国は急成長中ですから、抜かれるのはもう時間の問題です。

 「独裁を脱して、民主化を進めながら経済的にも成功し、国際社会でのプレゼンスも増している」という点では韓国はきわめて例外的な国なんです。ですから、当然「成功モデル」として日本にとっては模倣しなければならない対象になる。でも、それだけは嫌なんですね。

 中国やシンガポールの真似ならしてもいいけれど、韓国の真似だけは嫌だ。そう思っている人たちがたくさんいる。そういう人たちが嫌韓言説を服用している。「韓国に学べ」ということだけは口が裂けても言いたくない人たちがそのまま「中国=シンガポール型の独裁国家にシフトすることによって生き延びる」という選択肢に惹きつけられている。

▽記事内容を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190919-00010001-socra-soci&;p=1

★1が立った日時:2019/09/21(土) 21:23:15.87
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