放映中のNHK大河ドラマ「いだてん」の不調を受け、熊本県玉名市のPR施設「大河ドラマ館」の入場者が伸び悩んでいる。8月末現在で目標の4割に満たず、運営赤字の拡大も懸念されている。明智光秀を主人公とする大河ドラマの放映を来年に控え、同館を開設予定の京都府亀岡市も十分な準備が必要だ。

 同館は、登場人物ゆかりの自治体が期間限定で開設する。人物紹介や撮影時の衣装などを展示し、観光振興につなげる拠点だ。「いだてん」の主人公、金栗四三ゆかりの玉名市は総事業費約4億5千万円を投入。入場者を年間30万人に設定し、入場料収入などを差し引いた赤字は3億円弱と見積もった。

 しかし、1〜8月の入場者は約7万5千人。「いだてん」の低視聴率が原因とみられ、ビデオリサーチ調べで、世帯視聴率(関西地区)は8月18日5・9%、25日4・9%。昨年の「西郷どん」(平均15・8%)、2017年の「おんな城主直虎」(同14・1%)に遠く及ばない。

 市はもう一人の主人公、田畑政治の出身地である浜松市と連携するなどPRに躍起になるが、赤字拡大の恐れは強まる。玉名市は「ドラマ館は周囲の観光地に訪れた人が立ち寄る施設。近くに観光地は少なく、コアなファンしか来場しにくい」。市がドラマを誘致したわけではないことも影響した。

 一方、光秀が主人公の大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の誘致に成功した亀岡市は来年1月、府立京都スタジアム内にドラマ館を設ける。市によると、ドラマ館と光秀PR事業を合わせた総事業費は計3億2千万円超になる予定だが、入場者目標の50万人を達成すれば7500万円程度の赤字に収まり、70万人まで伸びれば赤字は解消される見通し、という。

 ただドラマに亀岡がどれだけ登場するかは未定で、市は入場者増に向けた対策を練り始めた。市内には保津川下り、トロッコ列車の発着場があり、亀岡から京都まで快速電車で約20分の距離。有名観光地との「近さ」をアピールし、旅行会社に周辺観光地とセットにした周遊ツアーを働き掛けている。

 市光秀大河推進課は「旅行会社の反応は良く、光秀への注目の高まりを感じる。オーバーツーリズムが指摘される京都市内からも訪れてくれるのでは」と期待する。

2019年09月03日 15時31分配信
https://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20190903000074