W杯初戦のトルコ戦は完敗に終わった日本。世界大会の厳しさを思い知る結果となった。

 試合の出だしから完敗だった。

 FIBAワールドカップのグループラウンド初戦のトルコ戦で、日本は試合開始早々から、トルコにレイアップやダンクでの得点を許してしまった。ゾーン・ディフェンス相手に3Pシュートも決められた。

 ディフェンス以上に問題だったのがオフェンスだった。

 トルコから「間違いなく日本のキープレイヤー」(ジェディ・オスマン/クリーブランド・キャバリアーズ)と警戒されていた八村塁は、徹底マークされ、何もできなかった。タイミングが悪いことに、2日前から発熱で練習に十分に参加できていなかったことも影響があったかもしれない。

 それ以上に、サイズも経験もあるアーサン・イリヤソバ(ミルウォーキー・バックス)に徹底マークされ、思うようにポジションを取ることもできなかった。ようやくパスが入っても、ダブルチーム、トリプルチームで固められ、シュートを打つにも苦労していた。シュートミスやターンオーバーは、相手の速攻につながり、ディフェンス崩壊につながった。

■点差以上に痛感した世界との差。

 前日に、トルコが自分を止めに来ると言っていることについて聞かれた八村は、「僕を止めても他に4人いるから関係ない。僕らのバスケをするだけ」と言っていたのだが、その『自分たちのバスケットボール』をまったくさせてもらえなかった。結局、第1Qで12−28と大きく差をつけられ、第2Qには互角に戦えたものの、第3Qでまた引き離された。終わってみれば67−86、点差以上の完敗だった。

「試合が始まったときから最後まで、試合をコントロールされてしまった」と、日本代表ヘッドコーチのフリオ・ラマスも言う。

 策がなかったわけではない。しかし、頭でわかっていても、実際にコートで実行できるかどうかはまた別だ。試合後に、選手たちも口々に、フィジカルの強さの差と世界大会での経験の差を痛感したと語っていた。

「チームとしても初めてのワールドカップということで臨み、世界の強さっていうものも感じましたし、その中でも、僕らも全然100%で試合できていなかった」と八村は反省する。さらに、相手の自分に対するディフェンスについても、「スカウティングをしっかりしてきて、僕のやりにくいプレーをして、僕らに対応してきた。僕らはそこにちゃんと対応できなかった」と、対応力の差を感じたようだった。

■米国ですら警戒する欧州勢のフィジカル。

 アメリカでフィジカルの強い選手相手にプレーすることには慣れているはずの八村だが、それでも世界大会でのヨーロッパのチームの強さはまた一段上だった。最近では、審判の笛やルールの違いから、NBAやNCAAよりヨーロッパのほうがフィジカルな試合をしているため、アメリカ代表ですら、FIBAの大会でのフィジカルの強さを警戒するほどなのだ。

 同じくアメリカで戦う渡邊雄太も、「フィジカルなディフェンスをしてくるだろうということも、ディナイ(ボールを入れさせないディフェンス)をしてくるというのもわかっていました。それに対して準備ができていると思ったのですが、彼らのほうがフィジカルなプレーをしてきた」と、頭ではわかっていたことでも、それに対応できなかったと語った。

 大会前の強化試合でニュージーランドやドイツに勝ち、強豪アルゼンチン相手に競ったことで、自分たちがベストを出せばトルコにも勝てると自信をつけていた日本だったが、その幻想を初戦から打ちくだかれ、現実を目の前に突き付けられた。

 もっとも、これまではその現実を知ることもできなかったのだから、それだけでも一歩前進なのかもしれない。渡邊も「いい経験になった。ここから学ばなくてはいけない」と前を向いた。


>>2以降に続きます

宮地陽子

2019/09/03 11:00
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