■あの人はいま 元NBAドラフト一巡目指名 八村塁さん(31歳)

2029年、NBAファイナル。 それを、TVで見つめる男がいた。
21歳で将来を嘱望されワシントン・ウィザースに入団した、八村さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」
若き日を回想する八村は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。NBAファイナルで、俺がアリウープを決めて活躍する夢を」

日本人初のNBAドラフト一巡目指名でウィザーズに入団するも本場の高い壁に阻まれレギュラー定着は果たせず、3年後にニックスへトレードされるも出場機会は叶わず、CBAに活躍の場を求めた。
しかし、故障がちになり、若手や新加入芸人の台頭に押され目立った活躍はできず30歳の若さで引退を決意。
今は駄菓子屋を営む傍ら、地元の少年バスケチームのコーチを勤めている。

●暖簾の屋号の文字は母国ベナンの先輩、ゾマホンさんの手によるものだ
「いらっしゃい」。北陸本線富山駅西口から歩いて35分。「駄菓子の八村」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると、白いタオルを頭に巻いたオコエさんと妻、ローズさんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『八村』という文字はゾマホンさんに左手で書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらったおかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「駄菓子好きはネットで大量注文して買う時代でしょ。ボクが仕入れている富山の有名メーカー『北陸製菓』のおかきは白エビ味なのが特徴だから、
塩や醤油がおかきだと信じ込んでる日本人にはモノ足りないようなんです。それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつてのライバルで現ナゲッツの渡邉雄太や、キングス所属の馬場雄大ついて尋ねると……
「あいつら俺より下手やったんですけどね(笑) 」と、おどけ
「監督に気に入られるのも才能だと思いました」
「怪我さえ無ければって…歯がゆいですけど。」
「今はもう現役に未練はありません。今度は、教え子でNBAチャンピオンを狙いますよ(笑)」

(写真) 白エビーバーを手に持つ八村さん。