若い世代は「情報収集はスマホだけ」になっている。

ニュース源について学生たちに質問したところ「Yahoo!ニュース」が圧倒的だった。
彼らは「ニュースはタダ」が当たり前と思っているのだ。

ネットサービス業者は、報道各社からニュースを購入し、各ネットへのアクセス増の手段として無料提供しているが、
それによってスマホ世代は、記者、報道各社が大変な労力とコストをかけて記事を作成しているジャーナリズムのありようへの思いが希薄になった。

毎日、ネットでニュースを無料で閲覧しているのは、コンビニの弁当を毎日ありがたくタダで食べているのと同じ感覚なのだ。

インターネットの商業化が始まり、新聞ニュースが無料公開され始めた1990年代末、
いち早く無料ニュースをネット公開したのは朝日新聞だった。

その制作を行っている現場を米西海岸のシリコンバレーに訪ね、「なぜニュースの無料配信を開始したのか?」と質問したところ、
「謎です。米国のサイトが無料配信を開始していたので、やらざるを得なかった」という答えだった。

その後、報道各社はネットサービス企業に記事を売るビジネスモデルを構築。
新収益源となったものの、ネット世界に飲み込まれるように各社の経営を弱体化させることになってしまったのではないか。

大手新聞社はやっと最近、ネット記事では「さわり」だけを公開し、全文閲覧には有料登録を求めるようになった。
だが、「ネットニュースはタダ」で育ってきた若い世代は有料登録はせず、無料の「信頼性のない」ニュースを選ぶことが増えた。

たとえば、大手メディアのニュースをまるごと引用したブログやツイッターで読む。
これは当然ながら著作権侵害の犯罪だが、その情報源の当事者が逮捕されたという話は聞いたことがない。

私がネット上のニュースサイトに書いた長文の取材記事を、公開と同時にまるごと引用し続けているブログもあった(激怒!)。

「ニュースは無料」の時代となった影響を大きく受けているのが、ジャーナリズムの「元気源」でもあったフリー記者たちだ(私もずっとフリーでやってきた)。
だが、ネットニュースでは取材経費が支払われたことはなく原稿料もすずめの涙。それは、取材しない、いい加減な記事が増えた原因でもある。

ジャーナリストを目指したいという学生には、「生活が成り立たないのでやめた方がいい」と助言するしかなくなっている。


■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/190824/dom1908240001-n1.html