所属タレントの反社会的勢力への闇営業問題をめぐって、吉本興業は8月8日、東京・新宿の東京本部で、「経営アドバイザリー委員会」(座長:川上和久氏・国際医療福祉大学教授)の初会合を開いた。

報道によると、吉本興業はこの中で、(1)所属タレント全員と書面の契約をむすぶ、(2)これまでの「マネジメント契約」に加えて、新たに「専属エージェント契約」を導入する、(3)タレントが2つの契約形態から選べるようにする−−と明らかにした。

同社の岡本昭彦社長は7月の記者会見で「タレント、社員はファミリー」と話していたが、 同社の口頭契約は問題視されていた。今回の「専属エージェント契約」を導入することで、どんな変化があるのだろうか。芸能問題にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

●欧米では「エージェント契約」が主流

−−専属エージェント契約とは何でしょうか?

まず、日本の芸能界では、芸能事務所とタレントは「専属マネジメント契約」を結ぶケースがほとんどです。これによって、芸能事務所は、タレントを育成して、メディアに売り込み、仕事を取ってくるという「マネジメント」をすることになります。

このマネジメントには、育成や売り込み営業、契約交渉、スケジュール管理にとどまらず、税務や法務、上京した場合の住居サポートなど、タレントの生活に幅広く及ぶトータルマネジメントになります。日本において、芸能事務所とタレントとの関係に、家族的関係が多い理由はトータルマネジメントにあることが一因ともいえます。

これに対して、「専属エージェント契約」というのは、タレントがトータルマネジメントを受けるのではなく、タレントが中心となって、芸能活動に必要な業務ごとに代理人(エージェント)を選任するというスタイルです。

たとえば、契約交渉、コンサート運営、楽曲制作業務、商品制作・販売、ファンクラブ運営、税務業務、法律業務など、芸能活動に必要な業務を別々のエージェントや税理士、会計士、弁護士などの専門家に委託するということになります。欧米ではこうしたエージェント契約が主流です。

●お笑い芸人の「エージェント契約」は初かも

−−なぜ日本では専属マネジメント契約が多いのでしょうか?

日本では、芸能界に入ったときから有名人というケースは、スポーツ選手や有名コンテスト優勝者というケースを除き、ほとんどありません。まず、有名になるためには、テレビをはじめとしたメディア露出が不可欠です。

そして、日本においては、テレビ業界などメディアと芸能事務所の結びつきが極めて強いので、メディア露出するためには芸能事務所に所属して、トータルマネジメントを受ける必要があるというのが現状でした。

最近は、Youtuberなど、ネットメディアを活用したスタイルもありますが、企業CMや映画など、多額の資金が動くところには、やはり依然としてテレビ局などのメディアが大きく関与しているのが実情です。

−−専属エージェント契約の導入は「日本初」なのでしょうか?

日本においても、ミュージシャンはまれにエージェント契約のケースがあります。たとえば、楽曲制作やコンサートなど音楽活動については、ミュージシャン本人がおこなって、テレビ出演などのメディア露出する際には芸能事務所のマネジメントを受けるというケースです。ただ、私が知る限りでは、お笑い芸人において専属エージェント契約というは今まで聞いたことがありません。

●「エージェント契約がうまく機能するのか課題も残る」

−−吉本興業のいう「専属エージェント契約」とは?

まず、吉本興業が本格的にトータルマネジメントをおこなうとなると、お笑い芸人1人に対する金銭的負担、労務的負担が莫大となります。6000人ともいわれる吉本芸人全員に十分なトータルマネジメントをおこなおうとすると、吉本興業の経営そのものが破綻する可能性もあります。

一方で、吉本興業の業務を仕事の獲得や契約業務に限定すれば、吉本興業の負担は軽減されることになります。また、同時に、それ以外についてはお笑い芸人の自由ということで、お笑い芸人の活動の幅を広げることにつながる可能性もあります。

特に、現時点でかなり売れているお笑い芸人にとっては、主体的に吉本興業にどのような業務を委託するのか選べるので、自由度の高い契約といえます。

以下ソース先で

8/9(金) 11:16
弁護士ドットコム
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190809-00009986-bengocom-soci
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20190809-00009986-bengocom-000-view.jpg