■「BBCニュース」などの海外メディアの報道

海外メディアでは、ジャニー氏の訃報を伝える記事で裁判についてはっきり記している。

2019年9月9日付ネットニュース版「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたジャニー氏の訃報を伝える記事にはこのように書かれている。
「2002年、東京地方裁判所は、所属する若いタレントたちへのセクシャルハラスメントを報じた週刊誌が
名誉棄損であるとの喜多川の主張を支持したが、その後、裁判所は判決の一部を覆した」(編集部訳、以下同)

同じ日のネットニュース版「BBCニュース」でも同様だった。
「彼のキャリアは論争と無縁ではなかった。1999年、日本の雑誌「週刊文春」が事務所の少年たちに対して
性的虐待を加えている記事を何度も掲載したのだ。
喜多川はすべての告発を否定。そして、雑誌を相手どった名誉毀損の裁判を起こし勝利した。
しかし、その後、裁判所は判決の一部を覆した。彼はどの告発に関しても罪に問われることはなかった」

■メディアの「ジャニーズタブー」が悲劇を生んだ

先に紹介した「BBCニュース」のジャニー氏訃報記事では、やはりこんな記述がある。
「彼の事務所は業界を支配していたため、ジャニー喜多川には誰も触れることができず、
あえて強大な事務所を脅かそうとする日本の主要メディアはいなかった」

もちろん、亡くなってすぐに故人に対する批判を行うのは不謹慎であるという感情論も理解できなくはない。
しかし、たとえば、今年3月に亡くなった萩原健一の訃報を伝える際には、俳優・ミュージシャンとしての功績のみならず、
大麻取締法違反、飲酒運転、出演料をめぐる恐喝未遂容疑といった、過去の逮捕歴も同時に報道するメディアが多かった。

であれば、ジャニー氏の訃報を伝える際、男性アイドルの市場を盛り上げた功績だけでなく、
その裏で確かに起きていた性虐待に言及するのもメディアとして当然の責務なのではないだろうか。

■「週刊文春」が報じたジャニー氏のセクハラとは

ジャニー氏の性的虐待疑惑については、タレントたちが暴露本で告発してきた。
だがすべては、公然の秘密のままだった。しかし、「週刊文春」は1999年から2000年にかけ、10回以上におよぶ追及記事を掲載した。

記事によれば、「合宿所」と呼ばれているジャニー氏の自宅や、コンサート先のホテルにジュニアのメンバーが宿泊する際、
夜中になるとジャニー氏が夜這いをしかけてきて、そのまま肉体関係を強要するのだという。

ジャニー氏はほとんど同じ手口で何人ものジュニアのメンバーに関係を迫った。
「週刊文春」の追及記事では、複数の少年が同様の被害を語っている。
ジャニー氏は翌朝になると必ず数万円単位のお小遣いを渡すというが、少年たちが肉体関係に応じたのは、そんなはした金のためではない。

ジャニー氏の要求を断れば、事務所内での自分の立ち位置が悪くなったり、
グループとしてデビューさせてもらえないかもしれないという恐怖があるからだ。
実際、記事ではジャニー氏との関係を拒絶したことによって口をきいてもらえなくなった例も記されている。

ジャニーズ事務所のタレントとして成功したければ、どんな理不尽なハラスメントであろうとも、歯を食いしばって耐えるしかない。
「週刊文春」は、ジャニー氏のハラスメント自体はもちろん、こうした権力構造そのものを、記事のなかで何度も繰り返し批判していた。

暴露本

元フォーリーブスの北公次による『光GENJIへ』(データハウス)
元ジャニーズの中谷良『ジャニーズの逆襲』(データハウス)
平本淳也『ジャニーズのすべて 少年愛の館』(鹿砦社)
豊川誕『ひとりぼっちの旅立ち』(鹿砦社)
2005年には光GENJIの候補メンバーだった木山将吾による『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社)

https://wezz-y.com/archives/67612
https://wezz-y.com/archives/67612/2
https://wezz-y.com/archives/67612/3