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 ほかにもBPOには課題がある。審議が遅い。この問題を週刊文春が報じたのは2018年11月8日号と同15日号だった。審議入りしたのは2019年1月である。だが、結論が出たのは同7月5日。背景には、委員たちが専任ではなく、時間が取れないということがあるのだろうが、いくらなんでも時間がかかり過ぎた。

 BPOは視聴者代表のはずなのだから、その視聴者たちに早く結論を届けるため、審議のスピードアップを図るべきだ。「委員が専任ではない」という理由は視聴者には関係ない。

 もう一つ。BPOは放送法4条をどう考えているのか。あらためて視聴者に提示すべきだろう。電波は国民共有の財産なのだから。

 同法は、(1)公安および善良な風俗を害しないこと(2)政治的に公平であること(3)報道は事実を曲げないですること(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること――と定めている。

 総務省や自民党は4条を「法規範(法律上の義務が生じるルール)」と考えている。だから、違反した場合は当然ながら行政指導を行う。過去には停波が視野に入れられたこともある(フジテレビ系関西テレビ、「発掘! あるある大事典」やらせ問題時に。2004年3月打ち切り)

 一方、BPOは4条を「倫理規範(単なる努力目標)」に過ぎないと解釈し、行政指導はできないとしている。憲法第21条の「表現の自由」が優先すると主張してきた。

 このため、総務省が行政指導に動くと、必ずと言っていいほど揉める。視聴者不在の対立劇が起こる。

 BPOは自分たちの4条解釈が理解されているかどうかを視聴者に問い掛けるべきだ。

高堀冬彦/ライター、エディター
1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長。2019年4月退社、独立。

週刊新潮WEB取材班編集
2019年7月13日 掲載