SANKEI DIGITAL INC.2019.7.3 05:05

楽天と7年契約を結んだ則本昂。視線の先にはチームの日本一と東京五輪がある  楽天・則本昂大投手(28)が日本選手ではプロ野球史上最長に並ぶ7年契約を結んだことが2日、分かった。3年契約の最終年に当たる今季からの新契約で、球団とは3月初旬に大筋合意。米大リーグ挑戦を封印し、日本代表「侍ジャパン」のエース候補として2020年東京五輪での金メダル獲得を目指す。この日はイースタン・リーグ、ヤクルト戦(仙台市・森林どり泉)に先発し、6回1失点と好投。6年ぶりの優勝、日本一を目指すチームに間もなく合流する。

 超異例の長期契約だ。則本昂に近い関係者によると、右肘のクリーニング手術を受けた3月11日以前に石井一久ゼネラルマネジャー(GM)との話し合いが持たれ、7年の契約延長で大筋合意。球団は検査結果から軽症と判断し、則本昂も球団側の熱意に決断した。

 「仙台で骨を埋めようかな」

 かねてそう吐露してきた右腕が“生涯楽天”を選んだ。新たな契約は35歳シーズンとなる2025年まで。年俸も旧契約の2億5000万円から見直されたもようで、7年総額20億円規模に達するとみられる。外国人選手を含めると巨人・趙成●(=王へんに民)の8年が日本球界最長だが、日本選手の7年契約は2006年の松中信彦(ソフトバンク)に並ぶ破格の評価となる。

 一時は米大リーグのテレビ中継を熱心に見たほど、強い憧れを抱いてきた則本昂。レッドソックス時代のメジャー通算334セーブ右腕、クレイグ・キンブレル投手(現カブス)の大ファンで「メジャーにはそんな投手がゴロゴロいる」と話すなど、将来的な挑戦を夢見てきた。

 旧契約には、今オフにポスティングシステムを使ったメジャー移籍について話し合う条項が盛り込まれていたが、これも今回の契約延長で消滅。13年のプロ入りから所属する楽天で、さらなる飛躍を期す。

 視線の先には、楽天での優勝とともに、来夏に開催される東京五輪への出場がある。「自国開催で現役でいられるなんて、まさに奇跡。次の開催時には生きていられないと思う。どうしても出場したい」と熱い胸中を激白していた。

 さらに「いつか、娘が彼氏を家に連れてきたときに、リビングに金メダルがあったら『おっ!』となるじゃないですか。父親の威厳とでもいうんですかね。それはパンチが効いてますよ」と“妄想”を口にするほど。メジャー挑戦なら難しくなる侍ジャパン入りへ。7年契約の裏には、そんな強い思いもある。

 13年には新人ながら開幕投手を務め、15勝を挙げるなど活躍。昨季まで6年連続で2桁勝利と圧巻の成績を残してきた。それでも、則本昂は「沢村賞も取っていないし、まだまだ日本でやり残していることがいっぱいある」と貪欲に語る。

 この日はイースタン・リーグ、ヤクルト戦で6回1失点と好投し、9日のオリックス戦(楽天生命パーク)での1軍復帰へ準備も整えた。同日、1軍は首位ソフトバンクに敗れたが、まだ3ゲーム差。13年以来6年ぶりの優勝、日本一を目指すチームのため、頼もしいエースが心機一転、再スタートを切る。

★則本昂大・日本代表での活躍

 2014年11月の日米野球で初めて日本代表メンバーに入ると、同15日の第3戦に先発。5回無失点6奪三振で一人も走者を許さない完全投球を披露し、MLBオールスター相手に白星を挙げた。15年の国際大会「プレミア12」では貴重な中継ぎとして活躍。1次ラウンドの米国戦では2回無失点の好救援でチームの逆転勝利を呼び、勝利投手となった。17年の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は中継ぎで2試合に登板した。

則本 昂大(のりもと・たかひろ)

 1990(平成2)年12月17日生まれ、28歳。滋賀県出身。八幡商高から三重中京大を経て、2013年ドラフト2位で楽天入団。同年に15勝(8敗)を挙げ新人王に輝き、チームの日本一に貢献。17年にはプロ野球新記録となる8試合連続2桁奪三振を記録。14年から18年まで5年連続で最多奪三振のタイトルを獲得。第4回WBC日本代表。178センチ、82キロ。右投げ左打ち。既婚。年俸2億5000万円。背番号14。

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