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 そもそもなぜ、八村を指名したのか、という疑問が残る。

 八村は、ドラフト候補選手の多くが参加する5月中旬のNBAドラフトコンバインには参加せず、チームから個別ワークアウトの要請があった場合、現地へ飛んだ。それが何チームだったのかは「言えない」と八村は明かさなかったが、ワシントン・ポスト紙によれば、ウィザーズは八村に声をかけていないそうだ。

 先月28日に八村が所属する代理人事務所のワッサーマンが、自分たちが抱える選手たちを集めて「プロ・デイ」を開催した時には、ウィザーズも足を運んだが、そこには全チームのスカウトらが顔を揃えており、むしろ、いない方がおかしい。

 実際にはそれ以前に、ウィザーズの社長代理で、かつては編成部門の副社長を務めていたトミー・シェパードが、2016年2月にNBAがトロントで主宰した「国境なきバスケットボール/グローバルキャンプ」に参加した八村を見て興味を持ったという。そしてもちろん、ゴンザガ大時代もマークを続けた。

 むろん、その程度のつながりならどのチームも持っているはずだが、指名の決め手になったのは、ドラフト当日の朝、スコット・ブルックスHCが、ゴンザガ大のマーク・フューHCにかけた電話か。ワシントン・ポスト紙によれば、フューHCは、「八村は、毎日一生懸命練習する。ディフェンスなどは心配することはない」などと伝えたそう。その後、指名の方向性が固まっていったとされる。

 結局、ウィザーズの八村への評価が本物かどうかは、これからわかる。

 ウィザーズにはジャバリ・パーカーとボビー・ポーティスという、八村とはポジションの被るパワーフォワードがいる。パーカーの来季はチームオプション。ウィザーズが行使すれば年俸は2000万ドル(約36億円)。そして、ポーティスは制限付きフリーエージェントとなり、他チームのオファーに対してウィザーズがマッチすれば、ウィザーズ残留が決まる。一人でも残れば、スモールフォワードでは、昨年のドラフトで指名され、終盤になってスターターに定着したトロイ・ブラウンが起用される見込みなので、八村は控えに回る。

 パーカーとポーティスはいずれもそれなりに計算できるだけにチームがどう判断するかだが、ワシントン・ポスト紙でウィザーズの番記者を務めるカンデス・バックナーさんに聞くと、「まだウィザーズは方向性を示していないが、おそらく二人ともチームを離れることになる」とのこと。

 であれば、八村の開幕スタメンも見えてくる。

 ドラフトも終わろうとしている頃だった。八村は相変わらず、いろんなところに呼ばれてインタビューや写真撮影を行っていたが、ふとすれ違ったフューHCと話す機会があった。

 そのとき彼はこう言っている。

「(ウィザーズは)塁にとって、決して悪くない」

(文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)