先月下旬、一つの玉座をめぐる壮絶な覇権争いを描いた『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下『GOT』)の幕が下ろされた。壮大な大河ファンタジードラマの最終章から学んだことがあるとすれば、皆が満足するエンディングを作ることは難しく、終わり方に納得できない視聴者が出てしまうことではないだろうか。英Independentが伝えた。

『GOT』最終章となる第八章は、第1話の米国での視聴数が歴代最高の1740万人を記録するなど、多くの視聴者を惹きつけた。しかし、予想外の人物の死や展開に疑問を投げかけたファンも少なくなく、Change.orgというサイトが放送局である米HBOに対して「Remake Game of Thrones Season 8 with competent writers(才能のある脚本家で『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8の再製作を)」という言葉を掲げた嘆願書サイトを作る事態になった。

しかし、結末で多くの意見が出たTVシリーズは『GOT』だけではない。過去の経緯をフラッシュバックで描くドラマの先駆けとなった『LOST』は社会現象を巻き起こすほど大ヒットしたが、そのラストは酷評された。高校教師が麻薬王にまで上り詰める姿を描いた『ブレイキング・バッド』もエミー賞作品賞を受賞するなど世界中を熱狂させたが、最終回は賛否両論だった。他に『THE WIRE/ザ・ワイヤー』、『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』、『MAD MEN マッドメン』も一部の視聴者が不満を漏らさずにはいられないファイナルを迎えていた。

これらの問題を受け、『THE FALL 警視ステラ・ギブソン』などを手がけた英国のTV&映画プロデューサーのヘンリー・スウィンデルは、映画やTVの結末は3つのタイプに分かれると説明している。それは、ハッピーエンドorバッドエンドのように結末が決まっている"クローズドエンド"、クリフハンガーで視聴者の捉え方に委ねる"オープンエンド"、そして"皮肉なエンド"の3パターン。

スウィンデルは"皮肉な終わり方"について「善人が報われず悪人が罰せられないような展開」が代表的だとし、「政治スリラーでよく起こること。キャラクターは自分たちが望んだ力を手にするが、そのために自分の魂を売ることになる。彼らにとっての"罰"は自身の選択に悩まされることであり、決して幸せを見つけることはないだろう」と述べている。

TV評論家のフィオナ・スタージェスは、TVの結末はさらに複雑化の路を辿っているとコメント。私たちが満足するシリーズを作り続けるにはその過程で幾つものわき筋が作られるため、「それらを全て一つの結末としてまとめることはほぼ不可能なこと」なのだという。

スウィンデルもこの意見に同意。「エンディングで行われる間違いの一つは、放送時間が増やされることだ。最善の結末を考えると、ドラマがあり、危機を経て、クライマックスを迎えるという過程をできるだけ長く伸ばしたくなるかもしれないが、結末はできるだけ迅速にした方がいい。そうすることで私たちはワクワクしながら見ることができる」と語っている。

これに当てはまるのが、フィービー・ウォーラー=ブリッジ主演・製作総指揮の『Fleabag フリーバッグ』。今年初めにシーズン2が配信されたが、全6話が絶賛のうちにシーズンファイナルを迎えた。他にも、昨年大注目された『ボディガード-守るべきもの-』など、シーズンあたりの話数が基本的に少ない英国のTVシリーズには、視聴者の満足度が高い作品が多くある。

米国のTVシリーズでは、視聴率の良さに乗じてエピソードが追加されることもしばしばだが、「もっと見たかった!」という気持ちを持たせるためには、潔く展開させることが必要なのかもしれない。(海外ドラマNAVI)


2019.06.17 17:00
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