インリンが言ってた。
久々に共演する宇梶の控え室に挨拶に行った。本番向けの少し際どい衣裳だった。
宇梶は丁寧に対応し、優しかったが、終始、インリンの目だけを見て話し、体にはまったく視線を向けなかった。
こんな男は他にいない。宇梶さんはたいへんな紳士ですとインリンは恋い焦がれる少女のようにはしゃいで語った。
宇梶は下を向いて困っていた。一言も話さなかった。弁解もはぐらかしも照れ隠しもしなかった。ただ黙っていた。